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恋色季節

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ざわざわと人が行き来するなか、あたしは目標を探した。

「じゃあな、中村!」

元気な声が聞こえてきた。

白石先輩って人の声…?

「バイバイにゃちび介!」

あ、宮本先輩

「フシュー…」

上月先輩かな?

「中村…早く帰ってこいよ」

工藤先輩も…

「負けるんじゃないぞ」

藤木先輩まで…

「頑張れよ、中村!」

木下先輩…

「負けないでね」

神崎先輩

「行ってこい、中村!」

赤井…先輩も

「ウィッス」

そう言って身を翻した理央。

何事もないように、去っていく小さくて大きい背中。

こんの…っ

「バカーッ!!」

声が割れるほど叫んだ。

自分でもビックリしたよ

こんなにデカイ声がでるなんて…

あたしの声に、テニス部の人たちも理央もみんなこちらを振り替える。

「な…んで、紗希が…?」

唖然としている理央の元へつかつかと歩いていく。

パンッ…―!!

「何でじゃないっ!!バカ理央ッ!!」

そういって思いっきり頬をひっ叩いた。

きっとあたしは今までにないほど、酷い顔をしている―…。

「紗希…」

「大嫌いだっバカ!!何で嘘ついた…の…」

怒りに拳を振るわせ、顔を勢いよくあげると、目を見開いた。

理央が泣いていたから…

テニス部の人達もそうとう驚いている。

何で、泣いてる―…?

「何で来たんだよ…っ」

「っ!!」

その言葉にたしの怒りは頂点に達した。

また手を振り上げた

が、

ぎゅっ…

「アンタが来たら…泣いちゃうじゃん…っ」

微かに震える理央。

「…泣けばいいっしょ」

「格好悪いじゃん…」

凄い力で抱き締められる。

「もう絶対…絶対嘘なんかつくなっ!!」

「ごめん…
泣き顔、見られたくなくてさ…」

そういってふっと理央が離れた。

もう泣いてはいなかった。

「ちっ…レアだったのに」

「うるさいよ…」

テニス部の人達はにっこり微笑みながら私達を見守っている。

「理央…あたしが浮気する前に帰ってこいよ」

「冗談。出来ないことはいうもんじゃないよ?」

「さぁ、どうでしょうね?」

アナウンスが鳴る。

別れの時間<トキ>がやってきた。

「理央…」

「うん。行ってくる」

泣かないって決めたのに、視界が歪んでいく。

理央の顔しっかり見とかなきゃいけないのに…

「じゃあ本当に行ってくるっス」

先輩方に一礼する。

「理央…ばいば…」

言葉を遮られた。理央の唇で。

「っ…」

目をつむってしまったから涙が溢れてしまった。

「紗希…」

「っ…ぅ…ぁっ」

「紗希…」

「ぅっ…な…に?ふぇ…っ」

「……――…」

理央は狂ったように泣く私の耳元で一言囁きゲートを通っていった。

人目なんか気にしない。

ただ今は君に精一杯の想いをぶつけてやる

「理央ぉっ!!
大好きだよぉっ!!!!」

最後の最後で振り替える理央。

理央は無邪気に笑っていた。

「俺も好き…愛してる!」

―Never said good bye―

―サヨナラはいわない―

あたしはその場に泣き崩れた。




作品名:恋色季節 作家名:紗智