井蛙は狂骨の為に歌う
アレから、どれほど経っただろうか。井の中の蛙は、今でも水の冷たさや日差しの暖かさの幻覚を生身で受けるように感じていた。
井戸の底で当たる太陽の暖かさ、井戸の底で見る月の風流さ。それらは見るたびに彼の心を彩る。
そしてそれらは忘れることは決してない。何故ならば、いつもそこにあるのだから。
ふと、遠くからカエルの鳴き声が聞こえてくる。ケロケロと頭の中を響いて消えていったその歌は、ふと懐かしさを感じさせる。
どこかでカエルは鳴く。きっと今日もどこかで友人がケロケロと歌っているのだろう。
作品名:井蛙は狂骨の為に歌う 作家名:最中の中