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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「哀の川」 第十九章 接近

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杏子は二人きりになったら、純一は必ず求めると思った。まあ、健康な男子ならそれが当たり前だ。まして純一は自分との関係が続いていた訳だから、欲求も強いし、リードも出来る。心配なのは杏子との行為で避妊は全くしなかったから、そのこと自体知らないように思うのだ。杏子から純一に教えるのは、辛い・・・だから由佳に知っておいて欲しい。その思いが、潤子への会話になっていた。

杏子は思いがけないことを聞いてきた。
「ねえ、潤子さん。ご主人ずっと転勤生活でしょ?夜は寂しく感じないの?」
「えっ?それは・・・無い訳じゃないけど、由佳と一緒だし、ここへも唄いに来れて楽しいし、今は思わないね。杏子さんは・・・寂しく感じているの?」
「女ですからね・・・誰でもいいかって考えたりするけど、もうそれを許してくれる年じゃないしね。相手が怖がる、フフフ・・・」
「どういう意味?関係が出来たら、捉まるって思われちゃうのかしら?」
「それもあるし、相手が結婚していたら揉め事になるからね。だから、避けて通るよね?避けられないような相手なら・・・逆にこちらが困るかも知れないしね、ハハハ・・・まあ、我慢しろって言うことかしら」
「それより、きちんと交際して結婚を考えたらどうなの?」
「子供が生めないんですよ・・・誰としても・・・それに40歳目の前よ。誰が貰ってくれるの?」
「再婚でよかったら、子供さんの居る一人身の男性って居るんじゃないのかしら?」
「だめよ、母親の想い出が子供は強いから、なじめないわよ、きっと」
「そうね、言うとおりかも知れないね。まあ、しばらくは私が居るからガンガン一緒に遊びましょうよ!旅行にでも行く?外国へ?」
「いいね!そうしましょう。今度の正月にでも休ませて貰ってそうするかな」

話は盛り上がっていた。

由佳は身支度をして母親に池袋まで送ってもらった。バスセンターから菅平高原行きに乗るためだ。部員も次第に集まってきた。純一も来た。顧問の先生が人数を確認してバスに乗車するように指示した。修学旅行並みの賑わいである。後ろの席から順番に座って、あいにく部長の純一は担任の山本先生と同席になった。独身の30代前半の女の先生である。美人ではないが、愛想が良く、みんなに好かれている。英語の受け持ちだが、歌もなかなか上手であった。

バスは出発した。純一は先生に色々と話しかけていた。
「先生は何故独身なんですか?」
「斉藤君、鋭いこと聞くのね!理由なんて無いわよ。縁が無かっただけ」
「そうですか・・・じゃあ、理想の人が見つかったらすぐ結婚ですね」
「まあ、そうなると嬉しいわね。この年になっちゃいい話は来ないのよ、残念だけど・・・女は損ね」
「ん・・・伯母もそう言ってました。先生より少し上ですが独身です。一度離婚はしていますが・・・」
「伯母さんがそうなの・・・先生もそうなのよ、同じね」
「えっ!そんなふうには見えませんが、いくつぐらいの時に離婚されたんですか?」
「28歳かな。学校を出てすぐに結婚したの。ずっと高校生の頃から付き合っていたから安心したのに・・・男の人って浮気するのよね。ごめんなさいね、斉藤君がそうだと言っているわけじゃないのよ」
「はい・・・その気持ちは解ります。父は母の浮気相手だったんです。僕は前のパパとの子供ですから、ママも心配していたようですが、新しいパパは優しいし、ママのこと愛しているからいい人だって感じられました」
「・・・斉藤君は立派ね。お母様も嬉しいですね。私もそんなふうに思ってくれる子供が居る人となら再婚したいわ・・・なかなか難しいと思うけど」
「先生は綺麗だからきっといい人見つかりますよ。僕たちも応援しますから!」
「嬉しいわ。斉藤君は魅力的な男子ね・・・フフフ・・・もうきっと彼女がいることよね?話さなくてもいいけど、私のような思いはさせないで頂戴ね。約束よ。今の話は二人だけの会話にして欲しいの」
「はい、先生」

バスは目的地に着いた。合宿は楽しくあっという間に三日間を終えようとしていた。

ESSの部員達を乗せたバスは池袋に向かって高速を走行している。疲れからかほとんど眠っていたが、純一と顧問の山本はまた同じ席になっておしゃべりしていた。

「みんな、寝ていますね」
「そうね、バスにゆられると気持ちいいから、それにきっと昨夜は話し込んで眠っていないでしょうからね。純一君も眠ったら?」
「先生!純一って呼んでくれましたね?」
「あら、いけなかったわ・・・斉藤君よね、気にした?」
「いいえ、構いませんよ。先生は名前なんでしたか?」
「環っていうの。珍しいでしょ?」
「タマキ・・・先生、ですか。いい名前ですね。じゃあ、これからは環先生と呼びます。いいですか?」
「構わないけど、二人だけのときにそう呼んでね。学校じゃあ変に思われるから」
「はい、そうします。ボクは眠くないですよ。先生こそ寝て下さい。肩貸しますよ・・・」
「まあ、そんなことしたら恋人同士みたいになっちゃうじゃないの。ハハハ・・・おませさんね?純一君は」
「そうですか・・・女の人好きですから・・・ハハハ、冗談ですよ」
「もう!困った子ね。まさか経験済み?」
「ご想像にお任せします・・・変な事話すと嫌われそうだから」
「今の子は早いから、あっても驚かないけど、先生が見ても純一君は男前だし、優しいし、もてるって感じるわね。私が同じぐらいの年だったら、きっと好きになったと思うから・・・」
「本気ですか?嬉しいです。今の先生可愛いですよ!みんな先生のこと好きですよ、男子生徒は。明るいし、優しいし。そう話してますから」
「本当に?・・・ならとっても嬉しいけど・・・あら?きれいが入ってなかったわね、どうしたのかしら?ハハハ・・・」
「冗談いいですね、ハハハ・・・伯母みたいでなんか嬉しいです」
「伯母さんっていくつなの?」
「38です。人形町でカラオケ喫茶やってます。そうだ先生歌お上手だから、遊びに行って唄って下さいよ。みんな大喜びですよ!きっと」
「そうだったの・・・カラオケ喫茶ねえ、それって演歌よね?歌は」
「まあ、そうですが・・・別に何でも構わないと思いますけど」

話は意外な進展を見せた。