時間移動における矛盾の解消方法に関する考察
おわかりだろうか。新品のライターは私Bから私Nへ直接渡り、タイムトラベルに巻き込まれていない。だが、私Bが過去に持って行ったライターは私Bが用意したものでもない、そして私Nが持っていたライターは私Nがすり替えた三日分古いライターである。つまり、私Nがタイムトラベルしたときに持っていたライターを、これからタイムトラベルして私Nの立場になる私Bに渡しているのである。三日分古いライターは、三日間の時間を永久にループしているのだ。そのライターはどこから来たものでもない、ただそこに永久にループし続ける不思議な存在になってしまったのだ。
マイナス・ゼロでは状況はちょっと違うが、このライターが「存在の環」に入って永久にループし続ける問題を提示している。これも一種のタイムパラドックスであり、物事に必ずある原因と結果の因果関係がループしている。
表面的には矛盾は無いように思われるが、そのライターという「存在」に矛盾が起きているのだ。これは早急に解消する必要はないと思う。むしろ物語のスパイスとして十分機能する。
そしてその存在の環の極めつけとして、自分が自分をみごもり、産んでしまうというとんでもない状況になってしまうこともある。これについては上記の「マイナス・ゼロ」をぜひ読んで体験してほしい。私の一番オススメする小説である。
以上を以って時間移動における矛盾解消の考察文を終わりにしたいと思う。この文を読んで時間移動を題材とした作品に興味を持ってもらえれば本望だし、タイムパラドックスについて関心を深めてもらえればこんなに嬉しいことは無い。
ありがとうございました。
作品名:時間移動における矛盾の解消方法に関する考察 作家名:ともひろ