神様ソウル
放課後。僕は屋上に続く階段を軽快に上っている。
僕の手には一通の手紙が握られている。下駄箱の中に置かれていた、丁寧に折りたたまれた手紙。そこには一言「屋上で待ってます。」とだけ。丸っこく可愛らしい文字、おそらく女生徒だろう。僕の胸は期待に躍っていた。
重い鉄製の扉に手をかけ、押し開ける。屋上に出ると、柵に寄りかかって校庭を見下ろしている小柄な女の子の後ろ姿が見えた。
あの子か。
扉から手を離すと、鈍い音を立てて扉が閉まった。その音に気付いて彼女が振り向いた。彼女はあわてた様子で僕のもとに駆け寄ってくる。
「あ、里見くん……だよね?」
「うん。この手紙……下駄箱に入ってて、『放課後に屋上に』って」
「私、里見くんに伝えたいことがあって……突然で申し訳ないんだけど、聞いてくれるかな」
「……うん」
この流れは……やはり。胸が高鳴る。
「あ、まずその前にこれを渡さないと」
女の子はブレザーのボタンを開け、懐に手を差し込んだ。何かを掴み、ゆっくりと手を引き抜く。その手に握られていたのは、怪しく黒光りする拳銃だった。
「え」
なんだ?
「あなたには申し訳ないんだけど、こっちも我慢の限界なの。ごめんね」
彼女は拳銃の先端をゆっくり僕の方へ向けた。
パン
僕の耳元を鋭い風切り音が駆け抜けた。
なんだなんだ?
「あれー、はずしちゃった?」
じわじわと動悸が高鳴る。
「もっかい」
彼女は拳銃を両手で握り直し、再び僕に銃口を向けた。
いまいち状況が理解できないけど危ない!
パン
弾が放たれる直前、全身を使って全力で右方向に跳ぶ。勢い余って床の上をごろごろと転がる。
「逃げないで下さい」
体を起こし出口へと駆ける。
後ろから二回、また発砲音が聞こえる。僕の数メートル前方の床に命中し、引っかき傷のような痕が残る。モデルガンにしては異常な威力だ。それともまさか本物?しかし、彼女の放つ弾は一向に僕には命中しない。
扉にたどり着く。屋上から出ることさえできれば……。ノブを掴み、回し引っ張る。
「あれ!?」
開かない。カギは掛かっていないはずなのに。さっき僕が開けたばかりなのに。
「残念でした」
「く…………」
行き止まりに追い詰められた僕の方へ女がゆっくりと歩いてくる。
「なんなんだこれ。……お前は誰なんだよ」
「理解する必要はないの。すぐに楽になるから。これでおしまい。ごめんね」
僕の目の前で彼女は立ち止まり銃を僕の額に突きつけた。
「ばいばい」
次の瞬間、引き金を引く音が僕の眼前で弾けた。
僕の手には一通の手紙が握られている。下駄箱の中に置かれていた、丁寧に折りたたまれた手紙。そこには一言「屋上で待ってます。」とだけ。丸っこく可愛らしい文字、おそらく女生徒だろう。僕の胸は期待に躍っていた。
重い鉄製の扉に手をかけ、押し開ける。屋上に出ると、柵に寄りかかって校庭を見下ろしている小柄な女の子の後ろ姿が見えた。
あの子か。
扉から手を離すと、鈍い音を立てて扉が閉まった。その音に気付いて彼女が振り向いた。彼女はあわてた様子で僕のもとに駆け寄ってくる。
「あ、里見くん……だよね?」
「うん。この手紙……下駄箱に入ってて、『放課後に屋上に』って」
「私、里見くんに伝えたいことがあって……突然で申し訳ないんだけど、聞いてくれるかな」
「……うん」
この流れは……やはり。胸が高鳴る。
「あ、まずその前にこれを渡さないと」
女の子はブレザーのボタンを開け、懐に手を差し込んだ。何かを掴み、ゆっくりと手を引き抜く。その手に握られていたのは、怪しく黒光りする拳銃だった。
「え」
なんだ?
「あなたには申し訳ないんだけど、こっちも我慢の限界なの。ごめんね」
彼女は拳銃の先端をゆっくり僕の方へ向けた。
パン
僕の耳元を鋭い風切り音が駆け抜けた。
なんだなんだ?
「あれー、はずしちゃった?」
じわじわと動悸が高鳴る。
「もっかい」
彼女は拳銃を両手で握り直し、再び僕に銃口を向けた。
いまいち状況が理解できないけど危ない!
パン
弾が放たれる直前、全身を使って全力で右方向に跳ぶ。勢い余って床の上をごろごろと転がる。
「逃げないで下さい」
体を起こし出口へと駆ける。
後ろから二回、また発砲音が聞こえる。僕の数メートル前方の床に命中し、引っかき傷のような痕が残る。モデルガンにしては異常な威力だ。それともまさか本物?しかし、彼女の放つ弾は一向に僕には命中しない。
扉にたどり着く。屋上から出ることさえできれば……。ノブを掴み、回し引っ張る。
「あれ!?」
開かない。カギは掛かっていないはずなのに。さっき僕が開けたばかりなのに。
「残念でした」
「く…………」
行き止まりに追い詰められた僕の方へ女がゆっくりと歩いてくる。
「なんなんだこれ。……お前は誰なんだよ」
「理解する必要はないの。すぐに楽になるから。これでおしまい。ごめんね」
僕の目の前で彼女は立ち止まり銃を僕の額に突きつけた。
「ばいばい」
次の瞬間、引き金を引く音が僕の眼前で弾けた。