小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「哀の川」 第十八章 杏子の決断

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

「何を仰います!息子さんは立派な男子ですよ。由佳も大変気に入っております。こちらこそよろしくお願いします。しかし、娘が申していましたとおり、お母様は本当に若くて綺麗ですね。羨ましいです。何か秘訣がおありなんですの?」
「いえ、そんな・・・若い頃からダンスはやっておりましたが、最近は仕事が忙しくて何もしておりませんの」

由佳が自転車でやってきた。外で話している三人に加わった。

「お母さん!何を話してたの?純一先輩に変な事言ってないでしょうね!」
「なによ来るなりそうそう怖い顔して・・・言ってないよ。お母様が綺麗ですね、って申し上げていたところよ」
「ならいいけど・・・母は遠慮しないところが悪い癖なんです。失礼があったら謝りますから」
「あなたが由佳さんね。純一に聞いていますよ。可愛らしいお嬢さんね。仲良くしてくださいね、ずっと・・・」
「ええ、そのつもりですよ、ねえ純一先輩?」
「おいおい、その押し付けがましい言い方は気になるなあ・・・それより由佳は何しに来たの?お迎え?それとも一緒に歌いにきたの?」
「先輩!唄うわけないじゃないですか。父が急に帰ってきたから知らせに来たんですよ」
「由佳!それを早く言わなきゃ!もう・・・勘定してくるから待ってて」

潤子は早々に訳を言って勘定を済まし出てきた。自転車の後について歩いて由佳と帰っていった。純一は荷物を積み終えて、麻子と一緒に杏子に挨拶をして車を自宅へ向かわせた。
「ねえ、純一・・・パパには言わないけど、あなた杏子さんと、その・・・仲良くしていたんじゃないの?怒らないから答えて」
「ママ!そんな話なんでするの?高校生だよボクは。杏子姉さんがそんなことするわけないじゃない。考えすぎだよ」
「それならいいんだけど・・・杏子さんはパパへの思いをあなたに感じたんじゃないかと心配していたの。姉がね、そんな話してくれたことがあったから」
「ママ・・・直樹パパは杏子姉さんとそんな関係だったの?」
「そうは思いたくないけど、杏子さんは好きだったみたいよ」

純一はいつか杏子が話したことにピンと来た。本当は直樹と結ばれたい想いを、自分と結ばれることで満足を得ようとしたのだ。いや、反対かも知れない・・・自分と結ばれたことで、直樹への想いを感じようとしたのかも知れない。解らなくなってきた、杏子の本当の想いが。今はもうそれを探る勇気もないし、思いもない。すうーっとこれまでの熱い気持ちが冷めてゆく。男と女は熱しやすく冷めやすい・・・と今知った。