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てっしゅう
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「哀の川」 第十八章 杏子の決断

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第十八章


今日は昼までの部活になるので、それぞれ渡された資料に目を通して検討する準備をしていた。最後に部長の純一から来年三月までの活動計画書が配られた。英語検定の受験日、外人講師の訪問指導、英語朗読大会への参加、そして夏の合宿など各自目標を記入してその日は終わった。約束どおりに純一は由佳と先日のファミレスにいた。

「純一さんは確かお父様が輸入のお仕事されているんですよね?」
「うん、そうだよ。今は加藤貿易と言って義兄の会社から殆どは仕入れているようだけど」
「じゃあ、お父様は英語ぺらぺら?なの」
「ううん、母が勉強して電話に出たり文章を書いたりはしているよ。一緒に住んでいる伯母は海外生活をしていたからぺらぺらだけどね」
「じゃあ、伯母様に教えてもらっていたのですね、英語は?」
「そうだね、子供のころは良く教えてもらったね。ロンドンも行ったし」
「へえ〜イギリスに行ったんですか?凄いなあ・・・外国へ行ってみたいわ」
「由佳のご両親は何をやっているの?」
「我が家はサラリーマンなの。母は専業主婦・・・まだ40前なのにすっかりオバサン・・・イヤになっちゃうわ。純一さんのお母さんはどんな風?」
「出かけるときはミニスカだよ、ハハハ・・・若作りしてる」
「へえ〜40ぐらいなんですよね?信じられない・・・」
「パパは35だよ。本当の父ではないけど・・・」
「そうなんですか・・・再婚されたんですね。じゃあまだラブラブなんですね。羨ましいです。父は今転勤で大阪にいるから、母と二人きりなんです。話すことも無くて・・・毎日が退屈」
「そんなことを言うものじゃないよ。親ってそれなりに苦労しているんだから・・・そうだ、お母さん連れて僕の店に遊びにおいでよ!カラオケ喫茶やってるから」
「母は歌が好きなんです!それはきっと喜びますよ。どちらでしたか?」

純一は詳しく説明してメモを渡した。次の日曜日に行くと由佳は返事した。

その日純一は家に帰ると、杏子の手伝いをしながら、由佳のことを話した。日曜日に母親と一緒に歌いに来ることも伝えた。杏子は嬉しそうに、楽しみにしていると返事をした。仕事が終わって、いつものように入浴を済ませ、眠りに就いた。純一は起きて勉強をしていた。この頃部長になったことと、大学受験のために夜遅くまで学習している。杏子は邪魔しないように隣で早めに寝ることにしていたが、ちょっと寂しい気がしていた。純一の布団に入る音が聞こえたので、小さな声で、名前を呼んだ。

「なに?杏ちゃん・・・」
「ごめんなさい・・・眠れなくて・・・こっちに来てくれない?」
「いいよ、そういえばこの頃別々で寝ていたからね。気にはしていたんだけど、やることが多くて・・・寂しかったの?」
「いじわる・・・純一は疲れているから何もしなくていいのよ。そばで一緒に寝てくれれば・・・安心するから」
「無理して・・・こうした方が、嬉しいんじゃないの・・・」

手を胸の膨らみにそっと触れた。反対側はスーッと下の方に滑らせていった。待っている間に何を考えていたのかと思わせるぐらい、もう十分に湿っていた。純一は教えられるとおりに励んで今はすっかりと上手になっていた。時間も長く耐えられるようになっていたから、杏子を必ず満足させていた。

「純一・・・ありがとう・・・嬉しいわ。すっかり大人になったのね・・・なんだか怖い・・・このままで居られるのかって」
「またそれ?ボクが好きなのは・・・杏ちゃんだけだよ。いつもそう言っているじゃない」

今まではその言葉に疑いを持たなかった杏子だったが、純一に何か変化があるように今日は感じた。女の直感に近い。その想いが抱かれることで消せるかと思ったが、そうではなかった。

日曜日になって、由佳と母親はやってきた。

「いらっしゃいませ!お待ちしていましたよ。どうぞ、こちらにお座り下さい」
杏子は右隅の空いているテーブル席に案内して純一を呼んだ。二階からささっと降りてきて純一は二人の席に座った。由佳を見た・・・いつも結んでいる髪を下ろして大人っぽくしていた。短いスカートから見える足は白く細い。これが後輩の早見?と目を見張った。自分の母親もそうであるように女は化粧とか髪型とか衣装なんかで、変身できるのだと感心していた。由佳の母親の方はごく普通の感じに見えた。由佳が言っていたようにお洒落すればもっと綺麗に見えるのに・・・と少し思った。

「早見、ありがとう。来てくれて」
「先輩!約束どおりに来ましたよ。それから、母の潤子です」
「初めまして、二年の斉藤純一です。ここのお店は伯母がやっていて今一人なので一緒に暮らして手伝っています。今日はたくさん唄っていって下さいね」
「斉藤さん・・・ありがとう、お誘い頂いて。由佳から聞いて楽しみにしていましたのよ。伯母様でしたの・・・綺麗な方ね。お母様はもっと綺麗だと由佳が申しておりましたけど、一度お会いしたいですわね」
「はあ・・・早見が言ったのは想像だと思いますよ、ハハハ・・・もう40ですから、母も。それなりだと思いますよ」
「あら、同じ年じゃないの!それなりなんですのね・・・若い方から見たらそうよね・・・」
「両親の家は渋谷なんです。カフェルームもある雑貨屋の店舗に住んでいます。キオナって言います。今度渋谷に行くついでがあったら、ご案内しますよ。早見に言っておいて下さい」
「ええ、是非!楽しみにしています」

純一は由佳に誘われて隣に座っていた。杏子がいるカウンターの中からは背中越しに見えるが、明らかに由佳が純一に好意を持っていることが覗える。その距離が時間と共に狭くなって来ているからだ。純一はそれを嫌わず、ほぼ身体を引っ付けたような状態で由佳と談笑していた。

なるべく純一たちを見ないようにしていたが、気になってくる。初めて襲う嫉妬心に自分が情けなくなっていた。38歳の伯母が17歳になろうとする甥に、嫉妬しているのだ。それも、親心としてではなく女としてだ。由佳の母親は目の前で楽しく話している二人を眺めて、とてもよいカップルだと思い始めていた。娘が純一を好きなことは簡単に解る。同じ女として合い通じるものがあるからだ。純一は男前だ。それに17歳になる年齢とは思えないほど、しっかりとしている。母親の教育がよほどしっかりとなされていたのだろうと想像した。

「純一さんはご兄弟は居られるの?」母親の潤子が聞いた。
「いいえ、ボク一人なんです。再婚した父とはまだ子供が出来ないんです。お互いに気にしてはいますが・・・仲が良すぎるのでしょうか、ハハハ・・・」
「そうですの。家も一人なんですよ。早くお母様に子供が出来るといいですね」
「ありがとうございます。そう願っています。いとこが実家にいるのですが、女の子でとても可愛いですよ。自分に妹が出来たらなあ・・・って思うんです」
「純一さんは、偉いねえ・・・親思いだし、しっかり考えられている。由佳は幸せだね、こんな素敵な人と仲良く出来るなんて・・・これからもよろしくお願いしますね」

母親はまるで由佳をお嫁にして下さいと言ったような口ぶりで頭を下げた。