察人姫-第壱話-
「お、ここの学食は上手いな。保澄の中々だと思ってたが……上には上がいるな」
青英大学メイン食堂。
一番人気の食堂ではあるが、時間としてはすでに三限が始まっているため、人は少ない。
そこでスタミナ定食を食べる早坂と、弁当を広げるソラとユーイチ。
「部室荒らし、盗撮、ストーカー……四つ目は?」
「それは三件が片付いてから改めて依頼する」
「はあ……ま、わざわざ僕達を頼ってくれるのは素直に嬉しいんですが、何でですか?正直警察に通報すべきだと思いますけどね、特に盗撮の件については」
隣で静かに食事をするソラを脇目にユーイチは封筒から取りだした書類を眺めながら呟く。
「警察……まあ確かに俺もそう思うんだが、あの校長がな」
「ああ、どうせ『学園のイメージが……』って感じでしょ?」
「まあな、しかも理事長にいたっては『ソラ君の活躍が見たい』なんて言い出す始末だ」
「……想像できますよ、それ」
保澄学園は日本有数の進学校である。さらに部活動においても優秀で、全国大会ではチラホラ保澄学園の名が上がってくる。つまり文武両道の名門校なのだ。
そのイメージを今の校長はかなり重要視しており、事件が起きたことを知られたくないため、通報を躊躇っているのだろう。
「なるけど。要は秘密裏に、迅速に解決しろとのことですか」
「ああ、これ以上被害が広がれば警察に通報するのもやむ無し……それが保澄学園としての結論だ」
不満そうに伝える早坂。彼としてはすぐにでも通報したいのだろう。
「じゃ、これから調査に行こうよ」
そこでソラが言う。
弁当箱はいつの間にか空っぽになっていた。
「安心してよセンセー。三つの事件……私が、名探偵ソラさんが一週間で解決してあげる」