察人姫-第壱話-
「やっほー、トラちゃん」
「おう、今日も元気……なんだ?一丁前に化粧でもしたのか?目の下が黒いぞ。はっきり言って失敗じゃないか?」
「いや、これ隈だよ……」
自分の机に鞄を置いてソラをからかう寅田。
鞄は書類鞄のようなものではなく、少し小さめのエナメルバック。そのバックはソラ達が卒業する時に二人がプレゼントしたものだった。
「そのバック使っててくれたんだ、嬉しっ!」
「ん?ああ、そう言えばお前らだったな、これくれたの」
「ひどっ!」
ソラのリアクションを楽しむように優しく微笑む寅田。
そんな寅田に冷たいお茶を準備する藤村。
「おお、すまんな」
「いえいえ」
「しかし……この机、昨日ちゃんと片付けておけと言わなかったか?」
「うっ……すみません」
無駄なものが一切ない寅田の机に対して藤村の机の上は文房具が散乱し、雑誌が溢れ、挙げ句漫画まで積まれている始末。
「け、けど急な仕事が入って……」
「言い訳するな、昨日の内に済ましておけばいい話だ……明日までに片付けておけ、でなければ要らんと思ったものは全て捨てるぞ」
「りょ、了解です……」
ソラ達の調査に付き添ったことを盾に言い逃れを図る藤村だったが、寅田にバッサリ切り捨てられ苦笑い。ソラやユーイチも高校生の頃はこんな風に説教を受けていたなと思いだし、同じく苦笑い。