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『喧嘩百景』第4話日栄一賀VS銀狐

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 彼らの鋭敏な感覚は一賀の殺気が途絶えてないのを感じていた。
 しかし。――もう俺たちには手の出しようがない。こんな身体に傷を付けることなんてできはしない。浩己は一賀の顔を見下ろした。
 「お前、綺麗な目をしてるな」
 最強最悪と呼ばれる少年はぎりぎりの力で腕を上げた。人差し指が浩己のうす茶色の瞳に触れる。指先がついっと眼球を撫でた。
 身体に傷を付けることはできない――だが。一生残る傷を――。
 浩己は覚悟を決めて一賀に顔を近付けた。
 「あんたにくれてやってもいい。ただし勝ちは俺たちがもらう」
 一賀はにこっと笑って目を閉じた。
 交渉の通じる相手とは思わなかった。目玉の一つくらい潰したところでその胸には傷(おいめ)も残らないのかもしれなかった。しかし、
「勝ちは譲らないよ」
彼は浩己に何の反撃も許さないままひっそりと呼吸を止めた。
 ――負い目を負わされることになったのは彼らの方だった。