男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず)
男と女のファンタジー 『 変若水(おちみず)』
随分と昔のことだろうか、森の奥深くに、清澄(せいちょう)な泉があった。
それは、いつもこんこんと湧き出る清冽(せいれつ)な清水を、満々と湛えていた。
そして、辺り一帯は静まりかえり、何か神懸かり的な雰囲気さえあった。
そんな神秘的な泉のほとりに、一人の青年が住んでいた。
名前をジュンと言う。
きりっと凛々しく、男らしい。
その上に、爽やかさも持ち合わせる好青年だった。
ジュンは、この森の木こり。
それはそれはの働き者だ。
毎日木を切って、親方から僅かな給金をもらい、貧乏ながらも気楽に一人暮らしをしていた。
しかし、時々将来のことを考えると、もうそろそろ町へ出て、森の生活ではなく、もっと違う世界で生きてみたいと思うところもあった。
そんなある日のこと。
一日の仕事を終えて家へと戻ってくると、泉のほとりに、うら若き乙女が倒れていた。
ジュンは驚き、直ぐさま走り寄って行く。
そして、ぐったりしている乙女を自分の胸の中へと抱き起こした。
しかし、その乙女の顔立ちを間近に見た時、口から心臓が飛び出るほど仰天した。
乙女には、そこはかとなく醸(かも)し出される気高い気品があった。
さらにジュンの胸をキュンと締め付ける色気も、燃える美しさもあった。
作品名:男と女のファンタジー 『変若水』 (おちみず) 作家名:鮎風 遊