舞うが如く 第七章 4~6
繭は「蚕」と言う昆虫がつくる生産物です。
蚕による品種や個体の違いによっても、
また生産された環境などの違いによっても
形や品質には、きわめて大きな異なりが生じます。
病気にかかって表面が汚れたものや、充分に生育していない薄い繭、
キズや色合いの悪いものは、ここでの選別によってすべて取り除かれます。
この選別を経てから繭は、ようやく煮繭の工程に移されます。
煮繭とは、接着状態の繭糸を順序よく解きほぐすために、
接着を適当にやわらげるために必要とされる工程です。
(女工哀史などでは、工女たちが熱湯の中へ大量の繭を入れ
まんべんなくかき混ぜていた光景があります。)
最新の製糸工場では湯や蒸気を使って、繭層を外側から内側まで、
均一に煮熟をしていくのです。
煮熟された繭は、繰糸機の索緒部へ移されて、
高温の湯の中で、索緒箒(ほうき)を使い表面を軽くこすって
生糸の糸口を引き出します。
この行程で、
最初は糸口がもつれた形のままで最初の糸が引き出されます。
この作業のことを索緒といい、
一本のただしい糸口になるまで糸をすぐることを
抄緒(しょうちょ)と呼び、引き出されたただしい糸口のことを、
正緒(整緒とも書く)と呼んでいました。
このようにして正緒が出された繭が、その次の給繭機に移されます。
繰糸機の繰解部(生糸を作る湯の櫓)に入れられてから、目的の
太さになるように、何本かを合わせて燃り(より・ケンネルとも言う)
を行います。
この燃り装置を使って、
細い蚕の糸が数本ずつが寄り合わされて、
やがて一本の生糸が集束されます。
作品名:舞うが如く 第七章 4~6 作家名:落合順平