運動場(1/26編集)
俺は、運動場の隅っこに“へんなやつ”が居るのを知っている。
それがいわゆる幽霊なのか妖怪なのか、はたまた妖精というものなのか。詳しい区別が付けられないし、どう区別をつけるのかなんて知らない。
見た目は自分より一つ二つ下の少女だ。顔が崩れてるとか手足が多いとか少ないとか、はたまた透けてるとか角が生えてるとか。そんなグロチックな容姿はしていない。目立つと言えば、銀色の髪を腰まで伸ばしていること、左右の目の色が違うぐらいだ。
それでもなんとなく、この存在はこの世に居るはずではないものだと最初見た時から自覚していた。
第一、私制服登校制とはいえ、学校内であの格好はおかしい。それにもし、他の奴らにもその姿が確認できるなら、他の誰かが不審がるに決まってる。めっちゃ目立つぞ、振袖なんて着てたら。
根拠の無い自信を、なんとか裏付ける理由も他に一つ二つあった。だからアレはオバケなのだと、その存在を認識する中で、彼女がそこに居ることに違和感も不自然も感じない俺が居る。
そう、最初から最後までそこに居る存在なのだ。なぜかあっさり心に収めることができた。まるで冷たい飲み物が胃の中に染み渡るように。
しかし居る理由がわからない。なんだって霊のくせに、こんな完全に太陽が昇っている時間に何をするでもなくただじっとタイヤに座ってたり、鉄棒に寄りかかったりしてじぃとサッカーやら陸上やらに熱中する人間なんて見ているのか。
急に教師に当てられて一度黒板に意識をやって、再びそっちに意識を戻すと、彼女はいつの間にやら居なくなっている。
(いつもそうだ)
それが、いつもからかわれているような気がして、妙に気に食わない。
堅苦しい公式が響く教室の空間から逃れるようにして、ほどよくクーラーが効いた涼しい三階の教室から運動場を見下ろした。
作品名:運動場(1/26編集) 作家名:狂言巡