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有名人の知り合い

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有名人の知り合い



小学二年生のショウ君は夕食時に学校であったことを話していた。

「ヒロシくんのお父さんは、プロ野球選手と友達だって言ってたし、マサルくんのお母さんは女優の何とかいう人と同じクラスだったって自慢していたよ。お父さん、お母さんには有名な人とか知り合いはいないの?」

ショウ君は悔しそうな顔をしてそう言ったあと、懇願するように母を見ていた。

母親は、ウーンとうなって思い浮かべようとしているが、思い浮かぶのはテレビでみた俳優やタレントばかりである。とくに韓国の俳優にはいれこんで、もうごく身近な知り合いといいたいほどであった。その名前を言おうとして、相手が自分のことを何にも知らないことに気づいて愕然とした。

母親は、助けを求めるように夫をみたが、今まで何かにつけ期待外れの人だったわと思い、目をそむけた。

父親もしばらく考えていたが、知り合い、親戚とも皆無名で平凡な暮らしをしている。
そのうちにはっと思い当たることがあり、グラスに入った飲みかけのビールを一気に飲み干したあと、マガジンラックから市報を取り出すと、市長の顔が入ったところを指差しながらショウ君に向かって言った。

「いいか、これがこの市の市長だ。名前をよーく覚えておきな」

ショウ君は期待に胸を躍らせて、その名前を記憶した。

作品名:有名人の知り合い 作家名:伊達梁川