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In der Stadt von einer stillen

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「ナーガエィ・キオ!!」
一時的に術に逆らった俺の躯は鉛の様に重く、印を組む為に腕を上げるのもやっとだった。だが、不意に一筋の緑銀の光が目の前をよぎったと思うと、躯がふっと軽くなり、アザレアを抱えたまま間一髪で炎の螺旋を避ける事が出来た。
「貴方の横暴はここで阻止します、フォーカード!」
「…流石、と言ったところか」
石畳みを焦がした炎が絶え、目の前が晴れると、掛けられた術を解読してシウアが一斉に解いたのだろう、砌、エルファ、シウアの3人がそれぞれの武器でフォーカードの首を今にも討ち取らんとしていた。しかし、奴の表情は依然として余裕だ。
「まあいい。実に惜しいが、愉しみは後にとっておくとしよう。今日はこの女を取り戻せただけでも…ククッ…」
「待て…!」
皆が武器を振るった時には、奴の姿は空間移転の陣を纏い、刃はその残像をすり抜けた。
「待って!!留衣!!」
アザレアが咄嗟に俺の手から離れ、駆け込んだ。俺もフォーカードの術をどうにか阻止しようと、シウアを一瞥して踏み込む。彼も険しい表情で印を展開した。フォーカードに抱えられたまま意識を朦朧としていた留衣はうっすらと目を開け、必死に手を差し伸べるアザレアと俺が視界に映ると、安堵したような表情で微かに唇を動かした。


…――――良かった…。


「留衣――――――――!!」
静かな微笑みを残した彼女の残像は、次の瞬間巻き起こった爆炎と共に消え去った。俺は術の気配を察して爆発寸前にアザレアを引き戻して床に伏せ、後にはそれぞれに唇を噛みしめる者達の姿があった。


作品名:In der Stadt von einer stillen 作家名:一綺