掌編集【Silver Bullet】
「どっかに移り住んだって話。民宿も解体するって話だけど、目途は今のところ立ってないそうだ」
「で、その話が月のウサギとどう関係があるの?」
「イヤそれがね、月でウサギが搗いているのは餅って話だけど、他のも薬を搗いてるって話もあってな。後もう一つ、そのクスリが開発されたって噂されているのが、玉兎研って話」
確か地元の大学の研究機関という話だ。テロメアの研究を中心に行っており、後ろ暗い話もそこそこ聞こえてくる研究室だ。あの研究室ならさもありなんとは思うが、噂は噂だろう。玉兎とは、そのままお月様の兎を現しており、テロメアは寿命に関係したタンパク質構造体である。お月様の兎が搗いているのは不老不死の薬、ざっと要約すると不老不死を研究する研究機関というわけだ。
「都市伝説だろ、あんなの」
この存在は都市伝説の類だ。どこの大学の研究室かも分からない謎の研究室。実際のところ、玉兎研が表立って問題を起こしたという話も聞かない。
「まあ、不老不死を研究している玉兎研がなんで視線恐怖症の特効薬を作らなきゃいけないのか分からないしな」
その日は以後、その話題が上がることはなかった。
作品名:掌編集【Silver Bullet】 作家名:最中の中