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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン2-黄昏の帝國-

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第1章 アレン始動


《1》

 砂漠に水が湧けば、自然とそこに町ができる。
 水の多さに比例して町も大きくなっていく。
 そこは砂漠の真ん中にある小さな町。これと言った産業はないが、一件だけ酒場がある。酒が飲める場所があるだけでも、ほかの町や村よりはマシだ。砂漠にある町はそれほどまでに貧困に喘いでいる場所が多いと言うことだ。
 今や世界の3分の2が砂漠地帯であり、人間が住める土地を差し引いた場合、砂漠地帯に住んでない人間のほうが少ない。
 砂漠地帯では作物が育たない。作物が育たなければ、家畜も育てることができない。深刻な食料不足の連鎖。
 生きるためには金がいる。
 金がない者は飢え死にをするだけだ。
 そんな世の中で、クーロンのような大都市ならまだしも、こんな田舎町で店のメニューを片っ端か注文する大食らいは珍しい。
 しかし、大男ではなく、小柄な?少年?というのが、周りを非常に驚かせた。
 山積みなった空の皿がテーブルに積み上げられていく。
 そのようすを見ていたカウンター席の男が、マスターにひそひそ話をする。
「あいつ化け物か? 店の食いもん全部喰われるんじゃねぇか?」
「そりゃ困るよ。あんな客想定外だ。店の食料だって町のもんと、外からたまにくる?普通
?の客の分くらいしか用意してないよ」
 マスターは溜息を落とした。
 一時的に売り上げが伸びても、食料が底をついて臨時休業となれば、結局は同じ売り上げになってしまう。それに常連たちには文句を言われることだろう。
 救いがあるとしたら、あの客が酒を注文しなかったことだろう。
「もし食料が底をついちまったら、常連さんには酒だけを出すしかないな」
 つぶやいてマスターは大食らいの客からもらった金を数えはじめた。
 この店では常連でない者からは、先払いで金をもらうことにしている。それが今回は仇となった。こんな金の大事な時代だからこそ、金を目の前に出されたら、それを突き返して帰ってくれとは言えない。
 フードを目深に被っていた少年がマスターに顔を向けて、大きく手を振った。
「おい、おっさん! この肉料理うまいから5人目くらい追加、金はここに置いとくぜ」
 大食いで周りを驚かせたが、金の羽振りの良さも目を引いた。
 テーブル席の3人組も?少年?の話をひそひそとしていた。
「あいつ何もんなんだ?」
「俺さっき便所行くとき見たんだが、ただの餓鬼だったぜ。そうだな、歳はやっと毛が生えそろったってところじゃねえか?」
「そんな餓鬼がなんであんな金持ってるんだよ?」
「盗みでもしたんじゃねえか? それ以外考えられるか?」
 二人が話している中、同じ席の男はひとり黙っていた。顔が少し青いような気もする。
 心配になった仲間が声をかける。
「腹でも痛いのか? 飯も酒も進んでないぞ?」
「……俺も便所に行くとき見たんだよ、あいつの顔」
 青い顔の男が重い口を開いた。
 二人の仲間の視線が青い顔の男に強く刺さった。
 ――なにを怯えているんだこいつ?
 そして、青い顔の男は再び重い口を開くのだった。
「保安所の壁に貼ってあった賞金首にそっくりなんだよ……あいつ」
「どうせちんけな盗人で三〇〇イェンくらいの賞金だろ?」
 少額の賞金首であったなら、男はこれほどまで青い顔をして怯えるだろうか?
 轟音!
 店のドアが破壊され、武装した屈強な男たちが続々と店内に入ってきた。
 人数は五人。先頭に立っている男は、ほかの者よりも身体が一回り大きく、リーダーの風格が伺える。
 リーダーの男が店内を見回した。
「一〇〇万イェンの賞金首はどいつだ!」
 この屈強な武装集団が店内に現れた衝撃を凌ぐ一言だった。
 一〇〇万イェンと言えば夢の金額だ。貧困層は一生掛かっても稼ぐことのできない金額。そんな賞金を出せる者も限られてくる。
 テーブル席に男がつぶやく。
「二桁間違ってんじゃねえか?」
 同じ席で青い顔をしていた男は首を横に振った。
「本当だ、三ヶ月の前の噂知ってるだろ……あいつが?雷獣?だったんだよ」
 ?三ヶ月前?で通じる話題と言えば、クーロンでの事件だ。
 クーロンに現れたシュラ帝國の巨大飛空挺キュクロプスが放った魔導砲。それとは別の脅威も人々は見た。あれがなんだったのか、未だに多くの人々は知らずに、数え切れない噂話が生まれた。
 そして、同時期に高額な賞金首を懸けられたのが、?雷獣?の通り名を持つ?少年?だった。
 賞金を懸けたのはシュラ帝國。事件との因果関係を誰もが勘ぐるだろう。
 ?少年?は屈強な男たちが乗り込んできたあとも、構わず食事を続けていた。まるで何事もなかったように。
 リーダーに睨まれた客たちが次々と首を横に振る。俺は?雷獣?じゃない――と。
 そして、最後に残ったのが?少年?だった。
「テメェが?雷獣?か?」
 リーダーが凄みを利かせて尋ねたが、?少年?は答えず食事を続けている。
 次の瞬間、銃声が鳴り響き、?少年?がフォークで持ち上げていた肉に大穴が開いた。
 ?少年?は凍り付いたように動きを止めた。
 子分の一人が笑い出した。
「ギャハハハッ、あの野郎、ビビって小便でも漏らしたんじゃねえか?」
 ほかの子分も続いた。
「一〇〇万イェンなんて何かの間違いだと思ったぜ」
 同じ額の懸賞金を懸けられている男がいる――?暗黒街の一匹狼?だ。彼はその賞金にいたる悪評や噂の数々がある。それが?雷獣?にはなかった。
 どこかで〈歯車〉の音がした。
 ?少年?が肉ごとフォークをテーブルに突き立てた刹那!
「俺の首狙うなら、顔くらい覚えてこいよ、なッ!」
 店にいた者たちが気づいたときには、?少年?がリーダーの顔面を拳で抉った瞬間だった。
 この場で誰よりも巨大のリーダーが大きく吹っ飛ばされ、後ろにいた子分たちを巻き添えに、ボーリングのピンのように次々と倒れた。
 客たちは眼を剥いた。
 しかし、これで終わりではなかった。
 男たちは?雷獣?の意味を知ることになる。
 ?少年?が懐から隠し持っていた?銃?を抜いた。
 閃光!
 瞬く間に稲妻が店内を翔け抜けた。
 雷音はまるで獅子の咆吼。
 屈強な男たちは立ち上がる隙も与えられず、聞くに堪えないおぞましい絶叫をあげた。
 魔導銃〈グングニール〉の稲妻は、身体の芯から肉を焼いた。
 被っていたフードがいつの間にか取れていた?少年?――いや、少女アレンはマスターに顔向けた。
「さっきの肉料理まだかよ?」
 店内に立ちたちこめる肉料理のような臭い。
 客たちが一斉に嘔吐した。
 平然とした顔をしているのはアレンだけ。その顔を見ただけで、幾つもの修羅場をくぐってきたことはわかる。
 恐怖で言葉を失っていたマスターだったが、ついにこう言ったのだ。
「テーブルの金を持って……さっさと出てってくれ」
 ときにその言葉は命取りになる。相手はつい今し方、屈強な男たちを一瞬で倒した100万の賞金首だ。
 しかし、アレンは金を持たずに店の出口に向かって歩いた。
「ごちそうさん、うまかったぜ。金は店の修理代にでもしてくれよ」
 アレンは店を出た。
 次の瞬間、緊張の糸が切れたマスターは気絶してぶっ倒れた。