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舞うが如く 第六章 7~9

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 「お見事、さすがに聞きしに勝る早技と、その身のこなしぶり。
 実に見事につきまする。
 わが弟、沖田総司がその男としての終生をかけて、
 想いを寄せただけはありまする。
 感服いたしました。」


 「終生とは・・・
 まさか、総司さまが、」



 「慶応4年の冬でした。
 病気療養をかねた潜伏中の江戸にて、病の末に、24歳にて没しいたしました。
 本日は、義弟の形見の品と、
 書きかけた琴殿への手紙を届けに参上をいたしました。
 遅くなりましたが、これなる品々を
 持参いたした。」



 「亡くなられたというのですか、
 あの、総司さまが、」



 「最後には・・・
 中庭に遊んでいる小さな黒猫ですら、斬れなかったと聞きました。
 剣も、思うように抜けぬほど、
 病に勝てず、衰弱してやせ細ったとありました。
 総司と言えば、幼き時より、人一倍寂しい想いをしながら育った子供です。
 取り柄と言えば剣のみと、かねてより私どもも、
 心配をいたしておりました。
 あの不器用者の総司が、どうやら恋心をいたしたようだと
 いつぞやの手紙にも書いてまいりました。
 それが、琴さまだったと知ったのは、
 ついぞ最近の事です。
 
  良之助どのから、あなたが京都に単身残られたのは、
 いちずに総司のことを思っていた結果だと、先日初めて教えていただきました。
 あなたのようなお方と、2年余りも、京都で過ごせたことが
 総司には、よほどうれしい事であったと思われまする。」



 居ずまいを正した林太郎が琴の前へ、
書きかけのままの書状ですが、という説明を加えながら、
古い3通の手紙を並べました。


 
 「いずれも、
 名前こそ書いてないものの、
 すべて琴殿宛に、ございます。
 それぞれに、日付けは入っているものの、
 文は、どれもが最後までは書き綴られておりませぬ。
 もともとが泣き言などは嫌いな男です。
 武骨にしか暮らしていけない性質ゆえ、あなたに、
 ついに本心が書けなかったようだと思います。
 書ききれなかった総司の想い、
 受取っていただけると、あいつもさぞかし喜ぶだろうと思います。
 これが、終生にわたって武骨に通した総司の
 形見とよべる手紙です。」


 
 「わたくし宛に・・・」




 「それと、これは総司の遺品を整理したおりに、
 荷物の中より出てきたものです。
 わが妻は、総司の姉に当たりますが、
 これともよくよく相談をいたした結果、これも
 琴どのにお届けしょうと相成りました。
 遺稿とともに、受取っていただこうと、こちらも持参をいたしました。
 おそらくは・・・
 新撰組にて京都で働いた折に
 手にした報奨金などを溜めたものだと思われまする。
 何かの際にお役にたててほしいと、
 こちらにも、総司の走り書きした
 書き添えなどがありました。」





 手ごたえのある、ずしりとした革袋がさし出されました。
しかし、それは受け取りませんと、琴が辞退をします。
しかし林太郎も引きさがりません。