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舞うが如く 第六章 4~6

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舞うが如く 第六章
(4)あらたな旅路



 旅支度の琴と八重がほとんど同時に振り返りました。
3分の2が廃墟となってしまった若松の城下を
見下ろすことのできる峠道です。
ひと月にわたる籠城の末、
砲弾の傷跡が無数に残る鶴ヶ城を足元に見下ろせる
峠に差し掛かりました。




 山本八重は兄の覚馬を頼って単身、京都へ行くことを決意しました。
琴も、庄内に先住している兄を訪ねることになりました。
それぞれの行き先がここから分岐をする峠の道で、
どちらからともなく寄り添って眼下の廃墟に眼をこらしています。



 「栄華をきわめた街並みが
 わずかにひと月で、焦土と化してしまいました。
 2000人にもおよぶという会津兵の死骸も、
 埋葬することが許されず、放置されたままと聞きおよんでいます。
 敗戦ゆえの処置とは言え、むごいことにありまする。
 会津はこの先一体、どうなるのでしょう、
 この荒廃と、どん底の失意から
 立ち直ってくれるのでありましょうか。」



 「八重殿、
 案ずることはありませぬ、
 男たちが、生命をかけて壊したものは、
 おなごと子供たちが築き直すことになるでしょう。
 街並みが消え、多くの命が失われ、城ががれきの山と化しても
 生命の営みが終わったわけではありませぬ。
 また、たくましく復興して以前よりも美しい会津の町が
 きっとうまれることになるでしょう。
 ただし、
 そのために、
 待っているのは厳しい試練の数々ですが、
 会津の魂は、それらを逞しく乗り越えて、きっと
 それらを成し遂げてくれることでありましょう。」



 琴が八重の肩を抱き、焦土から目を離さずにそう締めくくります。
しかし、その目にもかすかに濡れるものがありました。