ホラー
話を戻して。（どこまで？）
怖がりである彼女が、入浴剤で沈めた体が見えないうえ、水面には浴室の様子が映る状況で風呂に入った。
頭の中に流したメロディも何度かリバースさせているうち、疲れが眠気を誘ってしまった。
デートなどという、甘いものではない。
体を水中に引き込む恐れがある危険な誘惑だ。
彼女も何度か口元に潤う危険な誘いを受けるが、無意識に首を伸ばし、防御した。
だが・・・バシャ！
顔を襲った瞬間に、ばっちり目覚めた。
見事な生還だ。
おまけに、最後に入浴した者の決まり事、片付け作業のその一(いち)となる湯船の湯の流出を止めるべく任務の栓を抜くという動作を生還と同時に成し遂げたのだ。
（まあ、びっくりして偶然手に引っかかっていた鎖を引っ張っただけなのだが）
湯が流れ始めた。
彼女は、またぼんやりと眠気に誘われながら、浴室を出た。