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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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 突然のカーナビ・〈邪馬台国入口〉の出現はあったが、夏子との三泊四日の沖縄旅行は実に楽しいものだった。
 そして邪馬台国のことは少し気にはなってはいたが、京都へ戻ってからの日々の忙しさの中で、もうすっかり忘れてしまった。

 あの沖縄旅行から何ヶ月経っただろうか。早いものだ。今年も余すところ僅か、今はもう十二月。クリスマスを前にして、街ではジングルベルの歌声が聞こえてくる。そんな慌ただしい時節となった。
 そして今宵はオフィスの忘年会。それは木屋町の京料理店で催された。しかし、盛り上がりの中ではあったが、それは早々と九時にお開きになった。
 ここ立て続けに忘年会が続き、高見沢は少しお疲れ気味。そのためか本日は二次会を断り、早めにオケイハンで自宅に引き上げるつもりだった。

 会場を後にしてから先斗町(ぽんとちょう)を抜け、京阪四条駅へと一人歩く。
 今、酔いを醒ましながら四条大橋をゆっくりと渡っている。比叡山から吹き下ろし、鴨川を駆け抜けてくる風がヤケに冷たい。高見沢の頬を鋭く切っていくようでもある。

「ああ、寒くなってきたなあ、もう京都の底冷えの季節になってしまったのかなあ。だけど四条大橋から見る風景、それは四季折々いつも情緒があっていいよなあ。そんな京都に、また冬本番の到来か」
 気温は限りなく氷点に近い。小雪の混じる風が高見沢に容赦なく吹き付けてくる。 頬が冷たくて痛い。そんな寒さに、心が熱さを純粋に欲したのか、「京都に比べ、沖縄の風はチリチリと熱かったよなあ。しかし、あの暑さはなぜか気持ち良かったなあ」と反射的に思い出している。そして突然失われかけていた記憶が蘇ってくる。そう、四条大橋を駆け抜けていく風が、高見沢の脳を充分刺激したのだ。

「そうだったなあ。邪馬台国の入口が、確かこの辺にあったような?」
 高見沢は鋭敏ではないが、そう鈍感な男ではない。あとは連鎖的に自分自身に反応し、次に取る行動を思い立たせるまで、それほど時間は掛からなかった。