笑ミステリー 『女王様からのミッション』
「高見沢様には、ミッションの再確認をさせてもらいます。心の準備はよろしいですか?」
高見沢は「ホント、ヒミコはんはしっかりしてるんだから。へ〜い、いつでもどうぞ」と軽く返した。すると卑弥呼女王は、一瞬にしてその表情をきりっとしたものに転じ、大きな空間に高らかに声を上げられる。
「ミッション! グリーン・アイズを探し、邪馬台国に連れてきて、種の保存に貢献すること」
卑弥呼女王はあらためて高見沢にミッションを言い渡した。そしてその後、クカンテーツ王子とクラマ姫を連れて、奥の空間へとさっさと引き上げて行ってしまったのだ。
高見沢とマキコマネージャーの二人だけがその大きな空間に残された。高見沢はただただポカーンとしているだけ。
「おいおいおい、マキちゃん、これだけか?」
「そうよ、それだけよ」と、にべもない。
「俺、結構頑張ったと思わない?」
「そうね、高見沢さんの年齢にしては、頑張りはったわよね」
「ところで、なにか御褒美……もらえないの?」
高見沢は不満を漏らした。
「そんなものないわよ。クラマ姫の脱皮をスッポッポンになってお手伝いしたんでしょ。それが御褒美よ」と、マキコ・マネージャーに愛想がない。
「まあなあ、今までの人生の中で、あんなに神々しくて幻想的なことを体験したことはなかったよ。妖にして艶なる非日常的な美、それを拝まさせてもらったからなあ。そりゃ夢見心地のエクスタシーだったよ」
「じゃ、良かったじゃない」
マキコ・マネージャーはつれない。
「いやいや、そういうメンタルな御褒美じゃなくって、もう少し現実的に形のある御褒美、例えば、お食事券とかビール券とか?」
「さもしいねえ、そんなこと言ったら、高見沢さんの値打ちが下がるよ。だからもう善しとしなさいよ。サラリーマンには味わえない至福があったのだから」
高見沢もここまで言われれば、引き下がらざるを得ない。しかし、マキコ・マネージャーに一つ尋ねてみたいことがある。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊