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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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「青い光の中へのワープ、それは準備万端だよ」
 高見沢はそうクラマに声を掛けた。しかし、この段になって、クラマがもじもじとしている。
「おいおいおい、クラマ姫、緊張のあまりオシッコでもお漏らししそうなのか?」
 高見沢は心配で聞いてみた。

「違うわよ。あのね、クカンテーツ王子に逢うのはお久し振りなのよ。だからちょっとね、お化粧直しをして、新しい自分になってからお逢いしたいの。ねっ、高見沢さん、お化粧直し手伝って下さらない」
 男が女の化粧直しを手伝うなんて、聞いたことがない。また、今までそんなことをしたこともない。
「お化粧直し? そんなの、そこいらのバラの木の影にでも行って、コッテリとやってきたら」
 高見沢は無愛想にそう返した。クラマ姫は高見沢の愛想のないもの言いに泣きそうな顔をする。
「高見沢さん、私のお化粧直しってね、驚かないでね」
 クラマはそこまで言って、一旦口をつぐんだ。そして今度は覚悟を決めたかのように呟く。
「それは……ダッピなの」

「えっ、ダッピ??」
 高見沢はこう一言吐いて、あとは無言。これは一体どういうことなのだろうか? またまた訳がわからない。高見沢は少し気を落ち着かせて、もう一度聞き返す。
「ダッピって……、蛇とかザリガニとかがペロンと皮をめくる脱皮だよね? 英語で言うと、エクディシス(ecdysis)と呼ばれてるやつか?」

 クラマはこれに対し、もう意志を固めてしまっているのか、涼しい表情でさらりと。
「そうよ、生物学的な脱皮よ」
 しばらく二人の間に怪異な沈黙が……。そして高見沢はキツネにつままれたような顔をして、「へえ、そうなのか、脱皮を手伝うんだね」と呟くだけだった。

 そんな高見沢にクラマは自慢げに説明をする。
「アンドロメダ銀河の私たちは、卵から生まれる高等生物なのよ。だから地球上の哺乳動物じゃないわ。時々脱皮をしてね、新しくって、より美しい自分に生まれ変わって行くのよ」