笑ミステリー 『女王様からのミッション』
「私全部を思い出したわ。だからその青い光の中に入って行って、王子を連れ戻してきます。それでお願いがあるの」
「どんなお願い? 何でもさせてもらうよ」
高見沢には可愛いクラマ姫への御奉仕精神が溢れている。
「じゃあ遠慮なくね。青バラの花びらを、ここに敷き詰めて欲しいの。だって、もっともっと青くしないと、私、光の中へ入って行けないのよ」
高見沢はこんなクラマの懸命さに共感したかのか、「ふーん、そういうことね、ヨッシャー!」と快諾する。そして青バラの花びらを敷き詰め始める。
しかし、これがまた大変。とにかく青バラの花を摘み、その花びらを広場の真ん中に敷き詰めるのだが、青バラの棘は鋭い。高見沢はもう血だらけ。
「この青バラはね、私たちの星から持ってきて、ここへ移植したのよ。頑張ってちょうだいね。だって殺菌能力が強くって、棘が突き刺さっても大丈夫だから」
高見沢はどう大丈夫なのかがわからないが、こんな励ましを受けた。そして小一時間ほど汗を流しただろうか、広場の中心に直径約十メートルの青い花びらの絨毯が出来上がったのだ。
今、UFO船内の中心一帯が神々しいくらいに青い。
「さっ、クラマさん、準備万端だよ。ここから愛する王子を連れ戻しに、青い光の中へとワープして行って下さいね」
高見沢はここに至るまでの労力も忘れ、思いやりを込めて時空間移動を勧めた。それに対しクラマ姫は「永遠に滅びないもの、それは青バラの青い光だったのだわ。水先案内をしてくれてありがとう」と礼を述べのだった。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊