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笑ミステリー 『女王様からのミッション』

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「コンタクトを外して、緑の目に戻るでしょ、そしてパーム・スコープで覗いて見るの。そうするとね、くっきりと輪郭が見える人と見えない人に分かれるのですよ。それで、くっきりと見える人は私の味方なの。残念なことに、ほとんどの人は輪郭がぼんやりとしか見えませんわ」 
「へえ、それってスゴイ望遠鏡ですね」
 高見沢はこうあきれるしかない。そしてやっぱり確かめておきたいことを訊く。

「で、私の輪郭は……くっきり? それともぼんやり? どっちでした?」
 その女性・クラマは、高見沢の質問に可愛くニコッと笑い返す。
「高見沢さんの場合はね、ちょっとお腹が突き出ててね、メタボリック・シンドロームの兆候を伺わせる輪郭線が、はっきりと見えましたよ。だから私の味方なのね、安心してお話しを聞かせてもらいますわ」
 高見沢は一様合格のようだ。しかし、メタボ。
「アッチャー!」
 高見沢はついつい叫んでしまった。

 それにしても、この美しい女性・クラマからパーム・スコープなる不可思議な人間識別法を聞いて、びっくり仰天。
「そんな敵味方の判別をする方法があるのですか、それ便利そうだね。で、お母さんからそれを教わったの?」
「いいえ、私……」
 クラマはぽつりと答え、少し暗い表情となり語るのだ。

「私、天涯孤独なの。気が付いた時から、ずっと独りぼっちで生きてきました」
 独りぼっち、なんと辛い言葉だろうか。
「失礼なことを聞いてしまいました。気わるーせんといてくれやっしゃ、カンニンやで」
 高見沢は今度は胸をキュンと縮込ませて、京弁で謝った。
「いいのですよ、独りぼっちは事実ですから。パーム・スコープ人間識別法は、どうも緑の目を持つ私だけに備わったスキルみたい。それと私、幼い頃の記憶がないの、だから自分の年も正確にわからないのですよ」
クラマはそう話しをして、寂しそうにコーヒーを一口口にする。しかし、さすが高見沢、亀の甲より年の功。こんな場面では、あまり深刻にならない方が良いと思う。

「結構大変だったんだ、だけどまだお若いし、お綺麗だし、ストック・アナリストって憧れの職業だし、これから良いことが一杯あると思うよ」
 高見沢はそれとなく励ました。クラマはこれに応え、胸の内を明かし始める。
「ありがとうございます。だけど最近、それはそれは切ない気持ちになることがあるのですよ。それで先ほど、青バラの香りを嗅がせて頂いたでしょ、その時ものすごく安堵感を覚えたの。これって一体なんなんでしょうねえ。なにかずっと探してきたものが、見付かったような気がするのですよねえ」
「じゃあ、この青バラをクラマさんにプレゼントします」