笑ミステリー 『女王様からのミッション』
高見沢は、東京駅で新幹線から中央線へと乗り継いだ。そして夕方四時過ぎに、目指す吉祥寺に到着した。
今、四角井デパートの前に立ち、はやった気持ちを落ち着かせようとしている。
グリーン・アイズの女性は、夕方五時頃に四角井デパートの前を通ると言う。それは邪馬台国の情報部が入手した情報。したがって、信頼度は高いはず。
高見沢は四角井デパートの入口の大きな柱にもたれ、じっと時の過ぎ行くのを待つ。
小脇には青バラの土産が入った鞄。高見沢はそれをしっかり抱え、その女性にどうアプローチするかをただ漠然と考えている。
こんなナンパするようなこと、高見沢には経験がない。どう女性に接近して、どう声を掛けて良いのかがわからない。そのためか具体的な策が見付からない。
もうここは高見沢の行動規範。そう、『ウン・ドン・コン』から『やってみてから考えよう』への一連の流れに任せるしかない。
とは言っても、時間が迫ってくるにしたがって、不安がどんどん増してくる。
夕刻の吉祥寺四角井デパートの前、そこには都会の匂いがある。そして街の風景がある。
心配顔をした高見沢、その前には人々の頻繁な往来がある。高見沢はそんな足早で流れて行く人たちを落ち着きなく眺めている。
「都会の風景か、いいシーンだよなあ。だけどこんな人混み中で、グリーン・アイズを見付けることができるのかなあ、あ〜あ」
高見沢は無意識の内に溜息を吐いてしまうのだ。
夕刻五時前、人の流れがどんどんと増してきた。オフィスが引けつつあるのか、家路へと急ぐ人たち。またコンパへと、ワイワイ盛り上がりながら通り過ぎて行くグループ。実にいろんな人たちの往来がある。そんな中に、高見沢は放心状態で一人身を埋没させている。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊