背中
4月に入って暖かい春の日差しが降り注ぐ。
身に鮮やかな色をしたランドセルをもった小学生、
着なれない制服を来た中学生や高校生、
志を高くもった新社会人
そんな人を多く見ることができる季節になった。
そんな中俺は制服を着たまま一人公園のベンチに座っていた。
俺の名前は、片岡龍之介。
自宅から一番近い、という理由だけで、地元の公立高校に入学して既に1年が経った。
俺がなぜ公園のベンチに座り込んでいるのかって?
理由は・・・
「はぁ・・・またフラれた・・・」
そう。失恋だ。
今回で3回目の失恋。
中学で2回。高校では初めてのことだった。
俺が絶望に打ちひしがれて、完全にブルーな気持ちになっているその時、
制服のズボンのポケットに入れてある携帯が鳴った。
「誰だ?」
『広田美優』
と書かれていた。
彼女は幼馴染で、同じ高校に進学した。
たまたま小学校からずっと同じクラスで、高校でも同じクラスになった。
「もしもし・・・」
「うわ、暗い・・・」
「なんだよ。幼馴染がフラれたことがそんなに面白いか・・・?」
「なんも言ってないじゃん!でも、今回はかなり本格的に攻めてたもんね。」
「そうなんだよ。俺は誰にも必要とされてないんだ~」
「そんな悲観的にならないでよ。龍には私がついてるんだから!」
「まあ、美優はずっとそばにいてくれるしな。」
「そうだよ。私はずっと龍のそばにいるよ。だから元気だしてよ。」
「・・・・・・」
「龍が元気ないとさ、私も元気なくなっちゃうんだから。」
「うん・・・」
「大丈夫だよ。いつか本当に龍のこと好きになってくれる人が現れると思うよ。あの子は、たまたまそういう人じゃなかったってことだよ。」
「そうだよな。うん。美優?」
「ん?」
「ありがとう。」
「いいよ。いつものことだからさ。龍が元気になれば私はそれでいい。」
―――――――――――――――――
電話を切ると、自然と涙が頬を伝う。
それはフラれたからじゃない。悲しいからじゃない。
いつも俺を立ち直らせてくれる、美優の優しさが嬉しかったんだ。
誰にもわからないように涙を拭って家路につく。
その帰り道、俺の気持ちは普段通り鼻歌を歌うまでに回復していた。
「ただいま~」
「おかえり。」
ん?
違和感を感じて顔を上げるとそこには美優が立っていた。
「おかえり、龍。」
「お、おう・・・ただいま。」
俺はとりあえず2階にある自分の部屋へ行き、普段着に着替える。
そのあと、リビングへ降りていった。
リビングには親はいなく、美優一人だけしかいなかった。
「あれ?母さんはどこ行ったんだ?」
「ああ、おばさんならなっちゃんのお母さんと一緒に買い物に行ったよ。」
なっちゃん、というのは、同じく俺たちの幼馴染で、「久野夏希」という。俺たちが通っている高校の隣の私立高校へ通っているが、
今でも家族ぐるみで付き合いがあるほど仲がいい。
「ああ、そしたら2時間は帰ってこないな。」
「そうだね。おばさんたちほんとにおしゃべり好きだよね。」
美優は俺に気を使っているのか、フラれたことに関しては全く触れなかった。
そのまま、同じソファーに座って、普段通り何気ない会話をしながら1時間を過ごした。
「美優。」
「うん?」
「・・・ありがとうな。」
「え?」
「今日のこと。俺を励ましてくれたこと。」
「ああ、うん。」
美優はそばにあったクッションを抱きかかえる。
「マジで感謝してる。」
「なに?どうしたの?いつもの龍じゃないみたい。」
そう言うと美優は少し笑った。
俺もつられて笑顔が出る。
「あ、龍、やっと笑ったね。」
「そういえばそうだな。ちょっと気が楽になったよ。」
俺もそばにあったクッションを抱く。
「俺・・・・・・」
「ん?」
「美優のこと、好きだよ。」
「え・・・」
「いつも俺のこと励ましてくれて、高校入試の時も志望校落ちて、すごく落ち込んでるときに
美優はずっとそばにいてくれた。美優も入試終わってなかったのに。」
「うん。」
美優はクッションに顔を埋める。
「さっき電話してたとき、『あ、俺美優にずっと励ましてもらってるな』って思ったんだ。」
「うん・・・」
「何があってもずっとそばにいてくれる美優のこと、俺、好きなんじゃないかなって。」
「ん・・・」
美優はずっとクッションに顔を埋めたまま聞いていた。たまに鼻をすする音がする。
「美優、俺と付き合ってくれないか?俺、この気持ちはホンモノだと思う。間違ってないと思う。」
「・・・・・・」
「美優?」
どれほど時間が経ったのだろう。美優はそれ以来全く喋ろうともせず、ずっとクッションに顔を埋めている。
「美優。俺はいつまでだって待つよ。もう他の女の子のところにはいかない。今度は俺がずっと美優のそばにいたいんだ。」
美優は沈黙を守る。
「俺、情けない男かもしれない。美優がいないといつまでもクヨクヨしてる。でも、少なくともこれからは、今まで以上に男らしくなるよ。」
「龍・・・」
「ん?」
「いつでもそばにいてくれる?」
「お、おう!!絶対そばにいるよ!!美優が『いらない』って言ってもずっとそばにいる!!」
「・・・嬉しい・・・」
美優がようやく顔を上げる。
その顔は、目は、涙で一杯になっていた。
俺はそのとき、美優を守ると誓った。
「美優!好きだ!!」
俺は無意識のうちに花音を抱きしめていた。
「龍・・・私も・・・私はずっと龍のこと好きだったよ。もうずっと前から。」
「うん・・・」
「でも、龍がいろんなことに興味をもって、いろんなことに挑戦したりぶつかっていくのを邪魔したくなかった・・・いつでも飛び跳ねてる龍を止めたくなかったの。だから
、さっき『ずっとそばにいてくれる』って言ってくれたのがすごく嬉しかった・・・」
俺は嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
「龍は私でいいの?」
「俺は美優がいいんだ!」
「うん・・・龍、好き・・・」
美優の顔を見ると、涙でグシャグシャだった。
俺はその一粒を拭うと、その綺麗な唇に指を当てた。
「美優・・・ありがとう。」
そう言って、俺は美優の唇に自分の唇を合わせた。
美優は目をつむり、俺も不慣れながら一生懸命気持ちを込めた。
キスを終えると、額をあわせて笑いあった。
そのとき、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま~」俺と美優は顔を離し、何事もなかったかのようにソファーに座りテレビを見るフリをした。
クッションの下で手をつなぎながら・・・
「美優ちゃん、留守番してくれてありがとうね。龍之介はいつ帰ってきたの?」
「おばさんが出てってからすぐだったよ。」
美優は音はまだほんのり頬を赤らめたまま、返事をした。
「母さん。今日の飯は?」
「今日は餃子よ。美優ちゃん、うちで食べていったら?お母さんには私から連絡しとくから。」
「本当!?ヤッタァ!!」
「お留守番してくれたお礼よ。」
身に鮮やかな色をしたランドセルをもった小学生、
着なれない制服を来た中学生や高校生、
志を高くもった新社会人
そんな人を多く見ることができる季節になった。
そんな中俺は制服を着たまま一人公園のベンチに座っていた。
俺の名前は、片岡龍之介。
自宅から一番近い、という理由だけで、地元の公立高校に入学して既に1年が経った。
俺がなぜ公園のベンチに座り込んでいるのかって?
理由は・・・
「はぁ・・・またフラれた・・・」
そう。失恋だ。
今回で3回目の失恋。
中学で2回。高校では初めてのことだった。
俺が絶望に打ちひしがれて、完全にブルーな気持ちになっているその時、
制服のズボンのポケットに入れてある携帯が鳴った。
「誰だ?」
『広田美優』
と書かれていた。
彼女は幼馴染で、同じ高校に進学した。
たまたま小学校からずっと同じクラスで、高校でも同じクラスになった。
「もしもし・・・」
「うわ、暗い・・・」
「なんだよ。幼馴染がフラれたことがそんなに面白いか・・・?」
「なんも言ってないじゃん!でも、今回はかなり本格的に攻めてたもんね。」
「そうなんだよ。俺は誰にも必要とされてないんだ~」
「そんな悲観的にならないでよ。龍には私がついてるんだから!」
「まあ、美優はずっとそばにいてくれるしな。」
「そうだよ。私はずっと龍のそばにいるよ。だから元気だしてよ。」
「・・・・・・」
「龍が元気ないとさ、私も元気なくなっちゃうんだから。」
「うん・・・」
「大丈夫だよ。いつか本当に龍のこと好きになってくれる人が現れると思うよ。あの子は、たまたまそういう人じゃなかったってことだよ。」
「そうだよな。うん。美優?」
「ん?」
「ありがとう。」
「いいよ。いつものことだからさ。龍が元気になれば私はそれでいい。」
―――――――――――――――――
電話を切ると、自然と涙が頬を伝う。
それはフラれたからじゃない。悲しいからじゃない。
いつも俺を立ち直らせてくれる、美優の優しさが嬉しかったんだ。
誰にもわからないように涙を拭って家路につく。
その帰り道、俺の気持ちは普段通り鼻歌を歌うまでに回復していた。
「ただいま~」
「おかえり。」
ん?
違和感を感じて顔を上げるとそこには美優が立っていた。
「おかえり、龍。」
「お、おう・・・ただいま。」
俺はとりあえず2階にある自分の部屋へ行き、普段着に着替える。
そのあと、リビングへ降りていった。
リビングには親はいなく、美優一人だけしかいなかった。
「あれ?母さんはどこ行ったんだ?」
「ああ、おばさんならなっちゃんのお母さんと一緒に買い物に行ったよ。」
なっちゃん、というのは、同じく俺たちの幼馴染で、「久野夏希」という。俺たちが通っている高校の隣の私立高校へ通っているが、
今でも家族ぐるみで付き合いがあるほど仲がいい。
「ああ、そしたら2時間は帰ってこないな。」
「そうだね。おばさんたちほんとにおしゃべり好きだよね。」
美優は俺に気を使っているのか、フラれたことに関しては全く触れなかった。
そのまま、同じソファーに座って、普段通り何気ない会話をしながら1時間を過ごした。
「美優。」
「うん?」
「・・・ありがとうな。」
「え?」
「今日のこと。俺を励ましてくれたこと。」
「ああ、うん。」
美優はそばにあったクッションを抱きかかえる。
「マジで感謝してる。」
「なに?どうしたの?いつもの龍じゃないみたい。」
そう言うと美優は少し笑った。
俺もつられて笑顔が出る。
「あ、龍、やっと笑ったね。」
「そういえばそうだな。ちょっと気が楽になったよ。」
俺もそばにあったクッションを抱く。
「俺・・・・・・」
「ん?」
「美優のこと、好きだよ。」
「え・・・」
「いつも俺のこと励ましてくれて、高校入試の時も志望校落ちて、すごく落ち込んでるときに
美優はずっとそばにいてくれた。美優も入試終わってなかったのに。」
「うん。」
美優はクッションに顔を埋める。
「さっき電話してたとき、『あ、俺美優にずっと励ましてもらってるな』って思ったんだ。」
「うん・・・」
「何があってもずっとそばにいてくれる美優のこと、俺、好きなんじゃないかなって。」
「ん・・・」
美優はずっとクッションに顔を埋めたまま聞いていた。たまに鼻をすする音がする。
「美優、俺と付き合ってくれないか?俺、この気持ちはホンモノだと思う。間違ってないと思う。」
「・・・・・・」
「美優?」
どれほど時間が経ったのだろう。美優はそれ以来全く喋ろうともせず、ずっとクッションに顔を埋めている。
「美優。俺はいつまでだって待つよ。もう他の女の子のところにはいかない。今度は俺がずっと美優のそばにいたいんだ。」
美優は沈黙を守る。
「俺、情けない男かもしれない。美優がいないといつまでもクヨクヨしてる。でも、少なくともこれからは、今まで以上に男らしくなるよ。」
「龍・・・」
「ん?」
「いつでもそばにいてくれる?」
「お、おう!!絶対そばにいるよ!!美優が『いらない』って言ってもずっとそばにいる!!」
「・・・嬉しい・・・」
美優がようやく顔を上げる。
その顔は、目は、涙で一杯になっていた。
俺はそのとき、美優を守ると誓った。
「美優!好きだ!!」
俺は無意識のうちに花音を抱きしめていた。
「龍・・・私も・・・私はずっと龍のこと好きだったよ。もうずっと前から。」
「うん・・・」
「でも、龍がいろんなことに興味をもって、いろんなことに挑戦したりぶつかっていくのを邪魔したくなかった・・・いつでも飛び跳ねてる龍を止めたくなかったの。だから
、さっき『ずっとそばにいてくれる』って言ってくれたのがすごく嬉しかった・・・」
俺は嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
「龍は私でいいの?」
「俺は美優がいいんだ!」
「うん・・・龍、好き・・・」
美優の顔を見ると、涙でグシャグシャだった。
俺はその一粒を拭うと、その綺麗な唇に指を当てた。
「美優・・・ありがとう。」
そう言って、俺は美優の唇に自分の唇を合わせた。
美優は目をつむり、俺も不慣れながら一生懸命気持ちを込めた。
キスを終えると、額をあわせて笑いあった。
そのとき、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま~」俺と美優は顔を離し、何事もなかったかのようにソファーに座りテレビを見るフリをした。
クッションの下で手をつなぎながら・・・
「美優ちゃん、留守番してくれてありがとうね。龍之介はいつ帰ってきたの?」
「おばさんが出てってからすぐだったよ。」
美優は音はまだほんのり頬を赤らめたまま、返事をした。
「母さん。今日の飯は?」
「今日は餃子よ。美優ちゃん、うちで食べていったら?お母さんには私から連絡しとくから。」
「本当!?ヤッタァ!!」
「お留守番してくれたお礼よ。」