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洋琴奇憚

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差出人 momocrab@dokomo.ne.jp
受取人 Leonora@fmail.com
subject:ご連絡
管理人は私ですが、なんだかレオノーラ会みたいですね???。
チラシは持ってきてくれると思わなかったから、曲目まとめてお伝えしようと思ってました。

差出人 momocrab@dokomo.ne.jp
受取人 Leonora@fmail.com
subject:チケット
度々すみませんが、チケット 13:10でなく、13:20開場になってますよ。。。
時間、伝えましたよね?
もう配っちゃったしなぁ?。困りましたね。。
10分で客入れは聞いたことがないですよ。

差出人 momocrab@dokomo.ne.jp
受取人 Leonora@fmail.com
subject:考えてみれば
わたしなんか管理人だから誉められてきただけかもしれませんね。
ピアノは下手で桜以来うまくいきません。。フラ組はちょっと頑張ったが。
どうしてもみんなみたいに上手く弾けないです
レオノーラ会みたいだし。私はムーミンか?
わたしにはレオノーラさんみたいに御立派な旦那様もいませんし、ほめられるような仕事もないんです。
ピアノしかないんです。下手でも。どんくさくても。
疲れました。なんでも心地よいペースにしないとですね。では。

あ。。このひと。心の病気なのはわかっていたけど。ムカつく。限界。
それにムーミンは笑えない。似てるのはほんわかキャラじゃなくて、体型。

差出人 Leonora@fmail.com
受取人 momocrab@dokomo.ne.jp
subject:Reチケット
チラシとチケットはリハでくばりましょうって前から言ってましたよね。会場見取り図とタイムテーブルのこともです。直前リハに来れなくて今日しか直接説明できない人もいるんだから。開場時間は聞いたけど決めてくれてなかったですし、10分で余裕と思いますが、ご希望の時間をメールで流しますね。

チケットとチラシありがとう、はないわけですか。もうももこさんに会うのも嫌になったし、出るのもやめようかな。
しかし、どうしたって、十一月はホールをとってしまって、たくさん人を集めてしまったから、レオノーラは行きがかり上、どうにかして開催までもっていこうと思っていた。だけど考えてみたら、それだって別にやらなきゃならない義理はないわけで。彼女の親類である知人に少しだけ気を使っていただけなのだが、知人のほうは彼女にはあまり興味がないらしいし。
直前リハの前に、ブリッジさんの企画でアンティークピアノを弾く会というのが開催された。レオノーラは当然ショパンのバラードを持って行った。なぜだかももこさんはアラベスクを弾かず、夢を弾いた。コンサート出演者全員になにそれ、 といわれていたが。誰かが持ってきたドビュッシーの楽譜があって、アラベスクが入っていたので、エラールで弾いてみた。よい曲じゃないですか。和声展開だけ理解すればいいのにね。
この会の帰り道。しきりに話していって欲しいというので、駅前でお茶した。
『アラベスクはやっぱり弾けないです。なんでレオノーラさん、今日アラベスク弾いてたんですか。わたしよりずっと素敵に弾いてた。ずっと練習したのにわたしあんなふうに弾けないじゃないですか。エステ荘みたく弾きたかったのに、ぜんぜんだめですよ。もうアラベスクはやめて夢にするんです。』
>エラールには合ってますね。初期のドビュッシーは。
>弾けてるとはおもうけどなあ。今のももこさんが弾ける形で弾くことに意味があるんですけど。
>何度も言うけど、エステ荘とは違う曲ですよ。
『でも似てますよね。いしかわさんだって、おおたきさんだって、何年も同じ曲弾いてるっていうし、わたしも二年弾いてきた夢でもいいじゃないですか。』
>ん?。ショパンの幻想曲と、ドビュッシーの版画でしょ。まあ三年弾きこんでも無駄にはならない曲だからねえ。夢はだめってことじゃないよ。だけど、夢だっていきなり持ち出したらやっぱり完成度は良くないと思いませんか。
『たしかに夢も弾けなかったですよ。でもアラベスクよりましではないですか。』
>オリンピックと一緒でね、すごく上手に弾いた、ということよりも、その日のためにがんばった、ということに意味があるんだと思いますけど。安全な曲ばかり弾いていたら進歩ないよ。
『進歩って。わたしなんかぜんぜん進歩しません。』
>そんなことないよ。今日は小舟も大丈夫だったじゃない。
『大丈夫じゃないです。また落ちました。しかもパヴァーヌは全滅でした。どうしたらうまくなりますか。がんばってるんですよ。毎日朝出勤前にも弾いて、帰ったら9時まで弾いて。早く帰ってピアノ弾くために今の仕事を見つけたんですよ。こんなに練習してるのに、どうして弾けないんですか。』
>いや、だから弾けてないわけじゃないって。てまりさんにも言われてたけど、基礎練習とか古典以前のをもっとやったほうがいいのよ。ロマン派以降は、バロックと古典の土台があって初めて弾けるものだってば。脱力のこともそうだけどさ。弾きたい曲はわかるけど、ローマは遠いの。それに練習は時間じゃなくて、密度だから、ただ弾いてても。
『ローマには行きませんけど。じゃあツェルニーやればいいんですか。ハノンですか。やりましたよ。ばーっと一日で何十曲か弾いてみたりしましたよ。』
>エチュードはばーっと弾くものじゃなくて。数でもないし、目的を持って。
『先生みたいなこといいますね。先生、フランス組曲途中でやめてアラベスク持っていったら嫌な顔してたんです。それに昨日、やっぱり夢にしますって言ったら、無言でした。』
>そうでしょ。先生だって予定してる練習メニューがあるんだから、フラ組のあとはこれを、とか計画してたでしょうに。
『わたしにはピアノしかないんですよ。なのにうまくならない。ピアノが上手な素敵な人を見つけて、グランドピアノでパーティするのが夢なのに。』
『どうせ、みんなももこなんて管理人だから義理で呼んでるんですよ。下手なのにって陰では言ってるんですよ。何処にいつ行っても、アラベスクばっかり弾いてて、しかもぜんぜんよくなってなかったら、そのうち呼ばれなくなりますよね。』
『オンディーヌだって、レオノーラさんやおおたきさんがいるからみんなきてくれるんですよ。それに、会の司会頼んじゃったから、わたしいなくたっていいし。ブリッジさんはまったくメールくれないんですよ。今日だって話してくれないの。』
>司会ならやればいいじゃない。私がいけない日だってあるよ。ブリッジさんだって、今日呼んでくれたんでしょ。
『先生だって、最近はぜんぜんレッスンがなくて、わたしは本番前だって言うのに、もう二週間もほったらかしですよ。二回も連続で予定を変えてっていうから、二回目は断ったんですよ。先生もいいときはすっごくたくさんメールとかくれたりするのに、そっけないときはわかりました、ぐらいしか返事もくれないんです。』
『前はももこさん、素敵なんて言ってもらえたときもあったけど、最近はぜんぜんだめです。誰にも誉めてもらえない。』
作品名:洋琴奇憚 作家名:夕顔