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マーカー戦隊 サンカラーズ

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 それに驚いた様子もなく、二人はわずかに目を伏せる。そして小さな電子音が聞こえたかと思うと、まるで頷くようにゆっくりと瞬きをして、ソレーユが口を開いた。
「ミッション完了。これより本部に戻る」
「ちょっ……待てよ、どうすんだよコレ!?」
「心配しなくてもブランシュはここから消える。もっともお前のような奴がいると、また甦るかもしれないが」
 皮肉に歪んだルーナの顔が、いつもより淡いいつもの色の光に包まれていく。
そしてルーナにつられてソレーユを見ると、ソレーユもすでに淡い赤い光に覆われていた。
「おい……待てよ二人とも、もう行っちゃうのか!?」
「紅太。ヒーローもののお約束だろ?」
 光の中で輪郭がおぼろげになっても、ソレーユの笑顔は変わらずはっきりと目に映る。
「?あとは君たちにまかせた?ってな!!」
 けれどそれも一瞬のことで、強くなった光がすぐに二人の姿をかき消してしまった。
「えっ……」
「ルーナ……?」
「ソレーユ!!」
 顔も何も見えなくなって、それでも二人だとわかる仕草でソレーユとルーナが別れを告げる。
〈じゃあな!!〉
 そうしてひときわ強い光を放つと姿を消し、あたりは混乱が起こる前の風景に戻っていた。



 遅刻ギリギリの時間帯、紅太は焼きたての食パンを咥えて通学路を直走っていた。
右手に荷物、左手にパンを持って、走りながら朝食を咀嚼する。
「くっそぉ……ぅあ! っとととととっ!!」
思い切り靴紐を踏んづけてよろめくが、なんとか転ばずにすんだ。ホッとして思わず足が止まる。
「……セーフ。あー、ビビったぁ……」
 しかしそうやって安堵している間に背後からは予鈴が響いてきて、思わず紅太の喉から潰れた声がでた。ここでのんびりしている暇はない。
 大慌てで校門に駆け込むと、焦った様子の良介がすぐ隣を走っていることに気付いて、紅太は驚いた。
「もい! あんれひょうすけら――」
「もの食いながら走るな、行儀が悪い!!」
「んんっ……と! なんで良介がいんの? 珍しいな、寝坊?」
 紅太が尋ねると、良介が忌々しげに舌打ちした。それ以上答えないということは、おそらく図星なのだろう。
揃って昇降口で内履きに変えている間に本鈴が鳴り始める。
目指すは教室。廊下を歩く担任教師を追い越して、紅太は勢いよく教室のドアを開けた。
 そのままの勢いで教室に飛び込み、自分の机の上に倒れこんだ。
「……っ、せ……セーフっ!!」
 その後すぐに良介が席に辿り着いて、こちらはまっすぐに椅子に腰掛けた。無言のまま素早い動作でカバンからノートを取り出して、ホームルームの準備をし、そこでようやく肩の力を抜く。
「はよー。珍しいな。亘はともかく、藍川まで遅刻ギリギリなんて」
「あーくそ……うっせ、ほっとけ」
「あ……おはよう、二人とも」
 友達らしい女子生徒と話していた清夏が、二人に気付いて控えめに笑った。
「珍しいね。藍川くんまで遅いなんて……」
「ちょっと清夏ちゃん、俺はぁ?」
「え? 亘くんは……うーん……」
 困らせるなと良介にノートで頭を叩かれて、紅太が唇を尖らせる。
 そこへ担任が教室に入ってきて、出欠を取り始めた。最初に良介が返事をし、それから名簿順にクラスメイトの名前を呼ばれていく。
 なんだか笑いがこみ上げてきて、紅太は良介の背中をペンの背で突いた。
「なぁ。なぁ、良介」
「静かにしろよ、ったく……何だ?」
「俺さ、遅刻しなくなったよな」
 小声で交わされる会話がなんだか可笑しくて、堪えきれずに紅太の口から小さな笑い声が漏れた。










【Fin.】