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あゆり。

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四月の春、出会い



四月のことだった。

春の定番であるクラス替えをすっ飛ばしたうちの学校は学年に三十人いるかどうかの少数人の生徒しかおらず、何も変わらず学年だけが変わっただけである。
うちの学校は、所謂『訳有り』な生徒達が集まる学校で奇人変人がとにかく多い。まるで通常が異常であるかのように。
そういうことなのでクラス替えも環境が変わってしまって適応できない人もいるし何より人数が少ないのでない。その方が生徒も先生も手間がかからずいいのだろう。

そんな事前準備を終え、今日から新学期。
朝は兄のどたばたする音で目が覚め、玄関が閉まるのを確認してから起き上がり朝ご飯を作り、お昼ご飯を作り、着替える。その後もゆっくりと朝ご飯を食べる。
この後、早めにバスに乗って学校に行くのが定番なのだがテーブルの上に置いてある紙袋の中身を覗いてしまったのがいけなかった。兄の所為にしてしまいたい。

私の兄、姫月白兎(きづきはくと)は体力だけが自慢の無表情で何を考えているかわからないアホな男だ。それなのに学科は医学部ときた。殴りたい。
肝心の紙袋の中身は、昨日まで寝食を惜しんでパソコンに向かい両手の人差し指で格闘してたレポートだ。むしろ何故他の指を使わないのかが疑問でしょうがない。アホな兄め。
ちなみに紙袋には赤の太いマジックで『提出期限・時間厳着』…と書かれていた。意味がさっぱりわからない。アホな兄のことだから「提出遅刻厳禁」とでも書きたかったのだろう。
さて、時間を見ればバスは混んでいるが学校には間に合う時間である。しかしこの兄の紙袋を届ければ弱みは握られるだろう。

此処で少し考えてみた。

どうせクラス替えはしていないのだから自己紹介をする必要もない。よって新学期一日目は必要な書類を渡してはい解散っていうのが大体。
学校自体は単位を収めていればあまり何も言わない。遅刻も欠席も…それなりに大事だが月1とかなら大丈夫な筈。
だから私はいつもと同じ格好でいつもより遅い時間に出るのをやめ、バスが混雑していない時間帯に家を出て兄のいる大学に行くのだった。

作品名:あゆり。 作家名:むいこ