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『喧嘩百景』第3話日栄一賀VS緒方竜

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 滅多にお茶会には顔を出さない神田環が、一賀のためにハーブの入った紅茶を入れて運んできてやった。
 「ありがとうございます」
 一賀は丁寧に礼を言って差し出されたカップを受け取った。
 「緒方、あんたにゃ学習機能は付いてないのかい」
 羅牙は今度は竜に向かって話しかけた。
 「何やねん」
 「身体動かしたいのなら銀狐でも相手にしなって」
 「そうそう、一賀ちゃんみたいな虚弱体質に喧嘩売らないでさ」
 「そうよ、一賀ちゃんの顔に傷でも付いたらどうするの」
 碧嶋美希(あおしまみき)と神田恵子(かんだけいこ)も口を揃えて竜を非難げに言う。
 「何や何やよってたかって。悪いんは全部俺かい」
 怪我をしたのは自分だけなのに皆から散々言われて、竜は恨めしそうな目を一賀に向けた。
 「緒方は僕の顔は狙わなかったもんねぇ」
 昨日とは別人の一賀がにっこりと微笑む。
 ――顔?そういやそうやったかな。この綺麗な顔は手ぇ出しにくいさかいな。
 「会長、べっぴんやから」
 「緒方はお人好しだよねぇ」
 一賀は笑った。
 「馬鹿だね」
 羅牙が決めつけた。
 「そうそう、みんなからあれだけ忠告されてたのにさ」
 「そうよ、脱臼とそのくらいの傷で済んで良かったわよ」
 美希と恵子に続いてまた羅牙が口を開いた。
「薫ちゃんが止めてくんなきゃさ、その左手か目玉の一つくらいなくなってたかもよ」
彼女はそう言った。
 ――何、やと。どういうこっちゃ。お前らみんな、こいつの性悪、知っとったんか。こん畜生。ほな、あいつのこともか、佐々克紀。畜生。みな根性曲がっとる。
 リベンジや。――竜はまた拳に誓うのだった。