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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「夢の続き」 第十二章 相談

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第十二章 相談


恭子は部活を休んで急いで自宅に帰ってきた。服を着替えて貴史がやってくるのを心待ちにしていた。
由美がその様子に気付き声をかけた。
「恭子、どうしたの?そわそわして?」
「お兄ちゃんが来るの」
「そう、貴史が来るの。話ししたいことがあるの?」
「うん、ちょっとね」
「お母さんには言えないことなのかしら?」
「お母さんに?」
「女同士でしょ?聞いてあげられるかなあって思ったから」
「ありがとう・・・ねえ?お父さんのどこが好きになったの?」
「えっ?そうね・・・あなたのこと大切になさっている優しさにかな」
「男らしさじゃなかったの?」
「それもあるけど、やっぱり中身よね。外見は自分の弱さを隠したいからこだわるだけのこと。
恭子も好きな人が出来たらよく考えるのよ。外見や、やたらの優しさには惑わされないようにしてね」
「そうなの。お母さん失恋したことある?」
「そりゃこの年ですもの、何度か経験があるわよ」
「振られたの?振ったの?」
「どちらもあるけど、断った方が多かったかな」
「そんなにたくさん付き合ってきたの?」
「まあ、嫌な言い方するのね。三人だけよ。本気でしか恋愛はしたくなかったから」
「本気?・・・遊ばれたことはなかったの?」
「なかったわよ。お母さん結婚を意識してから恋愛したの。それまではお友達としての付き合い方だけだった」
「へえ〜恭子はまだ早いの?恋愛をするには」
「誰か好きな人が出来たの?」
「ううん、聞いただけ・・・」
「好きな人が出来るということは素敵なことよ。でもね、その想いと付き合いには差が出るの。若い時はよりそうなの。
恭子は身体が大人でも心はまだ中学生だからコントロールが上手く出来なくなって悩んだりするといけないから
お母さんはお友達の付き合いで続けて欲しいわ」
「お友達の・・・手を繋ぐぐらい?」
「そうね、そうして欲しいわ」
「でも、好きになったらどうするの?」
「恋愛と言うのはね二人が同じような想いで付き合うことが大切なの。洋子と貴史のようにお互いが好きで、気持ちを大切にしていないと
続かないし、傷つくの。いけないって言うことじゃないけど、手を繋ぐぐらいで楽しく仲良く逢えたほうがいいんじゃない?」
「相手の人が求めてきたら・・・断れない」
「あなたもうそんな関係になっているの!」
「おかあさん、お兄ちゃんには話したんだけど、一つ上の高校一年生の男子と付き合っているの。恭子のこと好きって
言ってくれる。今度家に遊びに来いって言われているの・・・どうしようか迷ったからお兄ちゃんに相談しようと思って・・・」
「よく話してくれたわね。恭子はお母さんの大切な娘だから傷ついて欲しくないの。貴史はきっといい話を聞かせてくれるわよ。
早く来るといいね」
「うん!何か知っているの?お兄ちゃんのことで」
「それは直接聞いて」

由美は洋子が中学三年のとき貴史にキスされたことを知っていた。そのことで傷ついた洋子を見ていたから、
きっといいアドバイスが恭子に出来るだろうと思い浮かんだのだ。

「こんばんわ!貴史です。入りますよ」
「お兄ちゃん!こっちに来て」
「恭子か。可愛い服着ているな、ちょっと大人って感じるぞ、ハハハ・・・」
「いつもお世辞言うのね。お姉ちゃんと違って私は可愛くなんかないのに」
「そんな事ないぞ。悲観するな。若いって言うのはすごい武器だぞ」
「そう?子供っぽいってダメなんじゃないの?」
「早く大人になりたいのか?恭子は」
「そういうことじゃないけど・・・綺麗になりたい」
「大丈夫だよ、今のままで十分だから・・・それはそうとして話ってなんだい?」
「恭子の部屋に来て!話すから」
「いいよ」

綺麗に片付けられている恭子の部屋は少女らしくピンク色で飾られていた。
「女の子っていう感じの部屋だなあ・・・なんだか恥ずかしいよ」
「お姉ちゃんの部屋はこんなんじゃないから?」
「そう言うなよ。あいつは質素だから」
「でも、綺麗・・・」
「まだ言うのか・・・恭子のこと一番可愛いって思ってくれているよ、洋子は。そんな風に嫉妬しちゃダメだよ」
「嫉妬?・・・恭子が・・・お姉ちゃんにしているということ?」
「洋子はそう言ってた」
「違うよ。お姉ちゃんに嫉妬なんかしてない。私は太めで可愛くないから羨ましいって感じているだけ。お兄ちゃんのこと
自分のものにってなんか考えたことないよ」
「そうだよな?俺もそう言ったんだけど、あいつ嫉妬強いから困るよ。もうわかったからいいよ。話は?」
「今度部屋に遊びに来いって彼から言われているの。どうしたらいい?」
「そうだったのか・・・」
「お母さんにも話したよ。お兄ちゃんに聞きなさいって言われた」
「ふ〜ん、そうだったんだ。意味ありげな言いかをしたな、さては・・・」
「そんな感じだった」
「じゃあ、話すよ。俺が中学三年の夏休みに洋子の家に遊びに行って、ふざけている間に重なり合って倒れたんだよ。
目と目が合って・・・とっさに俺はキスをした。したかったわけじゃないよ。気持ちがとっさにそうさせたんだ」
「すごい・・・そうだったの」
「偶然のこととはいえ洋子は泣き出して二人は気まずくなってしまった。高校も同じところで同じクラスになったから
気まずくて話すことが出来なかった。随分謝ったけど、洋子は怒っていた様子だった。二年の修学旅行のときに向こうから
求められてキスをした。今度はお互いが好きだったからとっても嬉しかった。それから今のように仲良く付き合うように変わったんだ。
俺は思ったね。好き同士でそうなるべくしてならないと気まずい思いをするって」
「お姉ちゃんお兄ちゃんのこと本当は好きだったけど、何も言わずに急にキスしたから怒ったのね?」
「そういうことだ。ものには順序って言うものがある。お互いに好きになって、大切にしたいと考えるようになってから
触れ合わないとダメなんだ。恭子も相手が積極的でも自分がまだだと思ったら断れよ。キスぐらいで洋子は傷ついたんだから
それ以上のことがあると、取り返しつかないぞ」
「それ以上?イヤだ!そんな事出来ない」
「恭子が拒んでも力ずくでされるぞ。男とはそういう生き物だから気をつけないと」
「お兄ちゃんもそんなことしたの?」
「だれに?」
「お姉ちゃんとか、他の女子に」
「してないよ。俺は・・・されたほうだ」
「えっ?お姉ちゃんってそんなに積極的だったの!」
「おいおい言うなよ。俺・・・叩かれるから」
「鬼みたいなんだね」
「鬼か!そうだ、鬼だ。ハハハ・・・」

二人の大きな笑い声に由美はいい話し合いが出来ていると感じられた。

洋子が学校から帰ってきた。
「ただいま!お母さん、貴史が来てるのよね?」
「お帰りなさい。そうよ、恭子の部屋にいるわよ」
「恭子の部屋?」
「私に聞かれたくない話があったみたいよ。少し待っててあげて、多分もう直ぐ降りてくるから」
「ふ〜ん・・・」

洋子は解っていてもちょっと不機嫌は表情になった。由美はそのことに気付いて話さないと、と思った。

「洋子、聞いて。恭子は貴史に大切な相談事があったの。それはあなたから直接聞けば解るから。そんな顔をしてはいけませんよ。