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舞うが如く 第五章 10~12

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 十六橋の攻防戦から帰還した竹子が、
母コウ、妹の優子らとともに、鶴ヶ城の城門へ駆けつけました。
かねてからの決めごとの通りに、髪を短く切り落し、
白鉢巻に白襷(たすき)をかけ、
日頃から稽古に用いていた義経袴を着用するという
会津『女子薙刀隊』の正装でした。



 薙刀を小脇にかかえて城門へと駆けつけましたが、
門は既に堅く閉ざされたままで、
このままでは入城することができません。
照姫の護衛のために駆けつけたものの、
門を開けてもらう手立てが見つからず、
戸惑い気味の竹子のもとへ、
同じく入城できなかった依田マキや菊子の姉妹、
岡村コマたちが、竹子を見つけて駆け寄ってきました。




 やがて城中より出て来たひとりの武士が、
薙刀を携えたまま立ち迷う婦人たちを見つけてすこし彼方より、
薙刀隊に声をかけてきました。
ただならぬ気配を漂わせつつ必死に、
照姫の警護を願い出る婦人たちの様子に、
この武士が当惑気味に応えます。



 「いかに、
 当藩の大事な折りとは言え、
 婦女子の力まで借りたとあっては
 会津藩士と武士(もののふ)の名も折れましょう。
 城内に入ることはかなわないと思われますが、
 その照姫さまなれば、
 慨に、坂下町にお立退きになられたと
 伺いました。」


 これを聞いた婦女子隊の一行は、ただちに坂下町へと走ります。 
しかしこれは、これはまったくの誤報であった事が
すぐに判明をいたしました。
とりあえずその日はそのまま坂下町で一泊をして、
翌日、あらためて会津藩軍事方の宿陣に出向いて婦女子隊の従軍を
竹子たちが直訴することになりました。



 だがこれもまた、軍事方にとっては
はなはだ迷惑なこととして取り扱われてしまいます。



「いかに会津の危機とは言え、
 婦女子たちまでを、戦場に駆り出したとあっては、
 のちのちに笑われては、
 われら、会津藩の武士の名折れと相なる」


「鉄砲に いまさら薙刀では
 とうていに、戦争にもなるまい」



 などと説明を繰り返して、
どうにかして竹子たちを諦めさせようとします。
だが女子も引きさがりません。



「お許しがなければこの場を借りて自害をいたす」


 などと言い出す者が多数出て、
引き下がる様子などは微塵も見せません。
やむなく「明日になれば、古屋作左衛門の率いる衝鋒隊(旧幕府歩兵)が
若松へ向って進撃するので、それに従軍してもよい」
とようやくにして軍事方より、
従軍が承認をされました。