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舞うが如く 第五章 10~12

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舞うが如く 第五章
(10)白虎たちが散る



 作蔵と琴は、
後退する白虎隊・士中二番隊の最後尾を守りました。
銃撃を逃れた疎水の入口付近で、ようやく傷ついた少年たちに追い付きます。
横たわっていたのは、竹子からお守りをもらった少年でした。
問われてここで初めて、「尊之介」と名乗りました。
袴が無残なまでに、鮮血に染まってはいたものの、
弾は、幸いにして急所を外れていました。


 「竹子どのの、お守りが効いたようである。
 少し痛いが我慢いたせ、
 もう一度、おぬしも竹子どのにも会いたいであろう、
 弾丸を取り除く。」



 作蔵がそう言うなり、
手ぬぐいで、きつく少年の太股を縛り上げ、
自らの小刀をその傷口に添えました。

  
 「歯を食いしばるがよい。
 男子であろう」


 琴が、倒れていたもう一人の少年を介抱していました。
こちらは肩口から弾丸が貫通をしており、顔色も蒼白で息も絶え絶えの様子です。
疏水の水をふくませながら、琴が血に染まった少年の顔を拭き清め終わるころには、
すでに若い命は散り終えていました。
さぞかし無念なことであろうと、琴が、少年の両の指をとり
むなしく胸で組ませています。




 隊列を乱して、散り散りとなり
ようやく飯盛山に到着した少年たちを待ちうけていたのは、
悲惨に燃えさかる若松城下の黒煙でした。
眼下に広がる城下からは、炎と黒煙がいたるところから立ち上がっています。
少年たちは、小手をかざして燃え盛る城下に見入りました。
降りしきる雨をものともせずに、炎は衰える様子を一向に見せません。
つぎつぎに城下の家々を呑みこみながら、
その炎と黒煙は次第に、鶴ヶ城を取り囲みはじめました。