小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

そういえば・・・(6/5編集)

INDEX|4ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

 新菜が起きた時、天井しか目に入らなかった。さっきまで見ていた景色とは全く違っていた。

「夢……を見たの。みんなが居なくなる夢。もう、何回目かなあ。前にも見たことがある気がする」

 首を触ってみると変な汗がべっとり流れ出ていた。ベトベトしてて気持ち悪い。顔を洗ってこようと立ち上がった。
 今何時かわからない。兄はまだ帰ってこないのか。
 後ろを振り返って壁にかけてある時計を見ると、ちょうど六時になるところだった。
 家の中は相変わらずシーンとしている。

 ――カシャン。

「わっ!」

 キッチンから食器がズレた音だった。

「び、ビックリしたぁ~」

 あまりの不意打ちに肩が跳ね上がり、心臓もいつもより動いていた。
 真っ赤な夕陽が窓から差し込んでできた影が不気味に思えた。自分の影さえも怖く感じた。影が今にもぐにゃぐにゃって動き出しそうな気がしてしまったからだ。
 空は西に沈みかけている太陽で真っ赤に染まっていた。

「……ヘンなの。ひとりしかいないのに、なんでこんなこわいんだろ」

 怖いというより、気持ち悪かった。
 その時、ピンポーン。呼び鈴の音がした。

「あ! 兄さんだ! かえってきたんだー」

 ばたばたとかけ足で玄関に向かう。はやる気持ちのせいで半ばドアにぶつかるように、鍵をあけると、そこには予想した通り兄が立っていた。

「#Welcome home back__おかえり__#! 兄さん! さびしかったよー」

 勢いに任せて飛びついた新菜に、兄は頭をなでてくれた。

「ごはんにする? あたしつくるよー」

 兄が小さく頷いて、部屋に入るとソファーに座った。
 新菜はキッチンにむかう。兄が好きなキャベツの芯とベーコンのかき揚げを作った。うどんは固ゆでだからすぐに茹で上がる。かき揚げを乗っけてみじん切りの葱をかけて出来上がり。おかずに昨日の揚げ茄子のマリネも温めた。新菜もお腹が空いていたので二人分。
 それらをお盆に載せて兄が待つリビングに向かった。

「兄さんーできたよー! ……あれ?」

 部屋はシーンとしていて……見渡しても兄はどこにも居なかった。

「兄さん? どこ? きがえにいったのかな? トイレかな?」

 お盆をテーブルに置くと部屋の中を少し歩き回った。部屋に居ないのを確認すると自室の二階にも上がってみた。一つ一つ部屋のドアを開けて確認していった。
 でも、どの部屋もやっぱりシーンとしてて、誰もいる気配がない。
 兄は、どこにも居なかった。トイレにも。リビングに戻ってきても、やっぱり居なかった。

「おっかしいなーどこ行ったのかな~うどんがのびちゃうよぉ……あ、もしかしてチューハイかいにいったのかも! ちょうどきれてたし! ……あれ、でも昨日缶チューハイを箱買いしてなかったっけ……うー……さきにたべちゃおうかなーおなかすいたよー」

 そう、新菜が迷っていた時。

「ニーナ!」

 新菜は悲鳴を上げる前に飛び上がった。何せ玄関から兄の叫ぶ声が聞こえたのだから。しかも、この呼び方は、怒られる時のあれだ……。

「なにぃ?」

 ドアを少し開けておそるおそるそこからちょっとだけ頭を出した。予想通り、兄は怒っていた。

「鍵が開いてたぞ! 戸締りはしっかりしろって何度も言っただろ!」
「え~なにいってるの~あたりまえじゃない、さっき兄さんがかえってきたときカギあけたんだから」
「は? お前こそなに言ってんだ。寝ぼけてんのか? 俺はたった今帰ってきたんだぞ」
「へ?」
「なんだよその顔は」
「じょうだんやめてよ、さっき兄さんかえってきてあたしのあたまなでてくれたじゃない。それでうどんたべたいっていったからいまうどんゆでたんだよ。なのに兄さんかってにいなくなっちゃってさ、うどんとマリネさめちゃったよ。なのに、げんかんでそんなこというなんてヘン!」
「おい、ちょっと待て。変なのはお前だろ、」

 そう言うと怒った顔ががらりと一変して、兄さんが心底困ったような顔をした。というより、混乱しているようだった。

「……ヘンなジョークじゃないの?」

 ミシリ、カタン。
 今度は家鳴りがした。その音はさっきの不気味さを思い出させた。同時にさっきから感じている違和感にも気づいた。

「兄さん」
「ん?」
「カギ……もってる?」
「当たり前だ」
「じゃあ、ベルなんてならさないよね」
「……?」
「なんでもなーい。うどんたべよー。あ、でもさめちゃったからあたためなおすねっ」

 よくよく考えたらそうだ。普通、自分の家に入るのに呼び鈴ならさない。
 新菜はリビングに置きっぱなしだった料理を片付けようとお皿に手をかけた。
 うどんが片方だけ、ちょっと量が少なくなった気がしたが、やっぱり寝ぼけてたんだと思うことにした。