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舞うが如く 第五章 6~9

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 白虎隊は滝沢峠を越え、
強清水(こわしみず)の山道を経てから、
夕刻近くになってようやく戸ノ口原に到着をしました。
彼らは急きょな出陣を強いられために、
食糧などを持参をしていませんでした。
戸ノ口原を守備していた敢死隊から、
握り飯を一人に二個ずつが配給されました。
そしてこれが、
少年たちの最後の食事となってしまいます。



 食事を終えた彼らは、
再び、降りしきる雨の中を進軍しました。



 夜明けとともに再び新政府軍が、激しい砲撃を開始します。
白虎隊も旧式の先込めヤゲール銃を使い、
負けずと応戦を繰り返しました。
戸ノ口原を守備していた敢死隊・奇勝隊なども、
新政府軍の攻撃に応戦をしますが、
新式兵器を駆使する新政府軍の攻撃にはかなわず、
会津側には多数の死傷者が出はじめ、
やがて徐々に後退をはじめました。




 この激戦と混乱の中で、
白虎隊は、小隊頭と半隊頭にはぐれてしまいます。
仕方なく若い篠田儀三郎(しのだぎさぶろう)が隊の指揮を執り、
強清水まで後退することになりました。


 少年たちは、主君と生死をともにしようと、
決死の思いで山道を急ぎ、ようやく滝沢不動の付近に出ることができました。
しかしあろうことか、この地点で遭遇した敵を味方と間違えて、
新政府軍の部隊に声をかけてしまった結果、
また激しい銃撃を受けてしまいます。
あわてた少年たちは、疎水の洞門に身を潜めました。




 この疎水は、猪苗代湖の水を会津城下へ導き入れるために
飯盛山の下をくり抜いて作られたものです。
少年たちは長さ100mほどの洞門を、腰まで水につかりながら通り抜け、
ようやく飯盛山のふもとに出ることができました。



 しかし飯盛山のふもとに出た少年たちが
最初に見たものは、若松城下を覆い尽くすさまじいまでの黒煙でした。
その先に見えるはずの鶴ヶ城も、煙に阻まれて、
まったく視界には入ってきません。
砲音と銃声が轟き渡る中で、さらに城下では新しい炎が燃え上がります。
政府軍の進攻を示す道筋かのように、
次々と城に向かって燃え上がる火の手は、
雨雲までも紅蓮に染めて、一層激しく燃え盛りました。