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きのう・きょう・あした

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 「・・・そりゃ、とってもチャーミングなひとだったよ。なんていうか、清楚という表現が
  ピッタシだね」
 「あ〜あ、おじさんが変な考え起こすとろくな事にならないわよ」
 「別に、何にも変な考えなんか起こす訳ないじゃないか、お前がどんな人だったかと、
  聞いているから、事実をありのままにご報告申し上げただけだよ、それとも、何か、
  変な考えを起こした方がいいか?」
 「そうね、慰謝料をたっぷりと。準備して置いてね」
 「そりゃお前、こっちが慰謝料を貰わなければいかんがな、わしの青春を返せと・・」
 「あんたは今から青春をしようと、してんじゃないの、高いわよ」
 「もう、わかった、わかった・・・今から貯金するよ」

この夫婦はこういった冗談とも、本気とも分からない会話をすることが結構多いのです。

 (1億円くらい貯金があったら、ほんとうに別れてやってもいいかな?・・・)

最近は、子供が独立してしまった後に離婚する夫婦が増えているというニュースを、
見たばかりでした。

 (ほとんどの、夫婦は多少なりともこのような波風があって、結局は腐れ縁というか、
  運命というのか、一生、一緒に暮らして行くんだろうな〜・・・)

頭の中で想像する夢の世界と、現実の世界とのギャップに目を向けると、年と共に悲しくなる
正彦であった。

 「まっ、こちらがいくらそう思ったって、若い女性がそんな気になるわけないし、あま
  り変な取り越し苦労をすると、シワが増えるぞ・・・」
 「それも、そうだ、あんたも、おめでたいわね〜、はっははは」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*オルゴールの話
 ・ネットサーフィンでオルゴールのプレゼントのページを発見し、申し込む。
 ・話に共鳴してもらった、河合さんからのプレゼントの申し出を聞き、3人で喜ぶ。
 ・渡辺さんを通じて、大石剛さんにもオルゴールの話を伝えてもらい、とても心まちに  してもらう。
*大石剛さんが亡くなったこと
 ・6月2日の朝、渡辺さんからの電話により、大石剛さんが昨夜亡くなったとの連絡を  受ける
 ・渡辺さんはすぐに玖珠町の葬儀に出席して哀悼の歌を送る。
 ・20日に埼玉の河合さんが福岡に来られ、渡辺さんに直接オルゴールを手渡す
*オルゴールを届ける、お家にお参りに行く
 ・渡辺さんが、オルゴールを玖珠町のお家へ届ける。
 ・その後で、正彦、山野明子、佐伯記者の3人で玖珠町のお家を訪ね、お線香をあげさ  せてもらう。このとき、正彦が大石剛君へ送る言葉を朗読する。
*「きのう、きょう、あした」のCDが進む。
 ・生前の剛君に約束していたからと、渡辺さんのCD制作が具体的に動き始める
 ・97年12月にCDが完成
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
あれから10ヶ月の月日が流れました。

 「中里さん、山野明子さんからのお手紙を預かってます。」
 「どうも有り難う、佐伯さん。彼女は今どうしてるんでしょう?」
 「私も、よく知らないんですが何か少し思い詰めてた感じもしたんですが、中里さんが
  ご存じ無ければ、私が知ってるはずないでしょ」
 「それも、そうだったですね。それでは、ここで失礼します」
 「どうも、お疲れさまでした」

正彦は、佐伯記者より受け取った手紙を胸のポケットにしまい込み、家路を急いだ。

 (あらためて手紙を書くとは何なんだろう? 普通の用事であればメールですむはずな
  のに、しかも、佐伯さんに預けるなんて・・・)

かすかな、不安が脳裏をよぎりました。


  『中里正彦様
   インターネットのメールで知り合えた正彦様に、このようにアナログのお手紙を
   書くのも不思議な感じがします。この手紙を開かれる頃多分、私は飛行機で日本を
   飛び立ってると思います。前に少しお話しした事があったとおもいますが、私が学
   生の頃ボランティアで行ったことのあるタイの子供村へある組織の一員としてしば
   らく駐在することにしました。10年前に亡くなった私の弟もきっとこの決断を喜
   んでくれると思います。結婚の話もありました。しかし、弟をああいった病気で見
   送った私としては、どうしても結婚して子供を産む勇気がありません。
   この10ヶ月、ほんとうに短いような、長いような、いろいろな事を経験できた充実
   した期間でした。そして、その間、わたしは、この1ヶ月自分の生き方について真剣
   に考えてみました。このまま保母の仕事を続け、皆さんと仲良く活動していく生活が
   したい、とも思いました。でも、このまま貴男のそばにいてはどうしても自分の気持ち
   の整理がつかないのです。貴男の私に対する真剣な気持ちはとても嬉しくて、この
   ままずっと貴男の側にいたい、貴男の愛を受け入れられたらどんなに幸せだろう、
   と思いました。でも、もう一人の私が、このままではいけない、一度貴男から離れて
   心を冷静にしなさい、とも言ってるのです。そうして、しばらく葛藤が続いた末、貴男
   と離れることを決心しました。このことは、貴男には何も相談できませんでした。
   また、貴男のやさしい言葉を聞けばきっと決心がにぶるのです。貴男の暖かな手
   に包まれると私は全ての決断が壊れていくのを何度も経験しました。このような私
   の決断は、貴男を裏切ることになるのかもしれません。どうかお許し下さい。
   そして、何年か先に日本に帰って来たときは正彦さんとも笑って会えるようになりたい。
   「おにいちゃん!」といつでも甘えられるようになりたい。今はそう思ってます。
   こんな、わがままな私ですがいつまでも応援していただけると信じています。
   さようなら・・おにいちゃん。そして、See You Again・・・・・』

手紙を読み終わった後も、しばらく流れる涙を拭うこともせず宙をみつめていました。

 (これで、よかったのかもしれない、ね、明子ちゃん。今度何年後に会えるか分からな
  いけど、今度会うときは、おにいちゃんと、妹だね・・・)

遠い海外へ向けて新たな旅立ちをしていった明子の今後に幸あれと、祈っていました。

 (恋は、遠い日の花火だった・・・のかなぁ・・・・・・・・・・・)