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2006-2010 詩集Ⅱ『そら』

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4.

僕は心に小さな石を持っている

硝子にもダイヤにも似た透明な
陽射しを浴びて一層きらきら光る石

その透明な輝石は
僕の誇りであり荷物だった
掘り出したばかりのそれは
内側の傷のお陰でよく太陽を反射した


その石は 他石の色をよく映した

情熱的なガーネット

静穏的なアメジスト

厭世的な翡翠玉

倦怠的な琥珀石

博愛的なルビー

悲観的なサファイア


特に強く艶やかな色は染め易く
当たり前のように僕の透明を奪っていく

無個性だと嘆くのではない
受動的だと笑うのではないのだ

ただその輝石は酷く共鳴し易く
深い色であるほど輝きを鈍くした
その度に傷は増えるのだ

だから僕は
その石を割らぬよう
その石を壊さぬように

蝕む色から静かに目を逸らす
太陽も真っ直ぐ見てはいけないように
暗闇に取り込まれてしまわぬように

だから君は泣かないでほしい
僕が天の岩戸に隠れても

僕が僕を保つために
僕が僕を理解するために行うのだと

どうか思い詰めないで欲しい
支え切れぬ僕だと呆れられるのは
揺るぎなく承知の上だから


僕は心に小さな石を持っている

硝子にもダイヤにも似た透明な
陽射しを浴びて一層きらきら光る石

いつしか七色を秘めるそれは

どの輝石より優しく冷たく色を放つのだ


『August 20, 2010 -- 鏡石』