スターブレイダ―ズ
第2話 羽ばたく者達
翌日、シンジの活躍がビッシリと新聞の全面を飾った。
「スター・ブレイダーズ久々の大活躍、かつての栄光取り戻すか? だってさ、でも……」
シンジ達はスター・ブレイド01を見上げた。真っ白い装甲のナイトはこれで飛べるのが不思議なくらいにひしゃげて黒ずんでいた。
すると隣りに立っていたホークがシンジの肩に手を当てる。
「いや、誰だって最初はこんなもんだ」
「小父さん」
「修理はどうにでもなるさ、今回の戦いでスポンサーも大喜びだ。なにせ大穴で大金が入った訳だからな。やっぱり若いってのは良いものだな、こっちも若返った気分だ」
「そうか、そりゃ何よりだ」
シンジは鼻で笑った。
シンジは帰還後SSBをやると言って仕事も辞表を出し、少しでもナイトに慣れなければならないと前に住んでいたマンションを売り払ってスター・キャッスルがシンジとチサトとプロメテスの家となった。
「それはそうとシンジ君、これからやる事がたくさんあるぞ」
「えっ、どう言う事? 小父さん」
「決まってる、新生スター・ブレイダーズのメンバー集めだ」
「あ、そうか」
シンジは手を叩いた。それはクルーだった。
「せっかく5機あるんだから、遊ばせて置くにはもったいないよな」
出撃できるナイトは1試合5機まで、参加できるクルーも1チーム5人までなのだが今のスター・ブレイダーズはシンジ1人だけだった。
「私も出たいが生憎ドクター・ストップがかかってね、コーチに回らせてもらうよ」
「そうだよ、小父さんはゆっくり休んでてくれ」
「でもどうやって集めるの?」
「やっぱり団員募集の広告とか出さないとダメじゃない?」
「だったらいっそのこと引き抜いちまったらどうなんだよ?」
「それは無理だ。今の我々の戦況を見れば分かるだろう、ここは地道に待つしかないさ」
「しばらくはオレ1人でがんばるしかないって事か……」
「あの……」
するとチサトが名乗りを上げた。
「私じゃ…… ダメかな?」
「な、チサトちゃん?」
「私もう13歳だし、ライセンス持てるんでしょう?」
ナイト・クルーになるにはライセンスを手に入れる必要がある、ライセンス発行は主だった病気がない限り12歳から会得可能でSSBを取り仕切るSSB協会に登録すればすぐに発行してもらう事ができる。
しかもクルーを乗せたナイトには必ず強制脱出装置が付けられていて、そのナイトがやられる瞬間クルーは自軍の戦艦に送還されるので命の危険はまるでない。
「いやしかしな……」
ホークが口ごもるとチサトは目線を落として言った。
「私ね、お兄ちゃんが学校中退してまで働いて、それでて私の事ばかりで好きな事もできないのにずっと苦しかった。だから少しでもお兄ちゃんの役に立ちたいの、SSBならお兄ちゃんの負担も軽く出きる。私達兄弟で最強のタッグを組みましょうよ。私達なら無敵になれるよ。だから私を信じてお兄ちゃん」
「チサト、お前もそんな事言える年になったんだな」
シンジは涙を流し鼻を啜った。その姿はまるで親馬鹿の父親であった。
チサトの決意を見たホークは負けたと言わんばかりに微笑してため息をこぼした。
「いいだろう、その代りビシビシいくからな、2人とも覚悟して置くんだぞ」
「「ハイ!」」
シンジとチサトは声を揃えて言った。だがレナだけは何も出来ずに唇を噛み閉めた。
さらに翌日、ライセンスの発行が終わってチサトもナイト・クルーとなった。
それと同時に宇宙にスター・キャッスルが飛び立つと宇宙空間に1機のナイトが飛び出した。チサトが乗る黒いナイト、スター・ブレイド05の猛特訓が始まるのだった。
チサトはエンジンを起動させて操縦桿を動かす、途端スター・ブレイド05のブースターが勢い良く火を噴いた。
『緊張せずに肩の力を抜くんだ!』
モニターにホークの顔が映し出される、今ホークはスター・キャッスルからチサトの動きを見て指示を送っている。
「は、はい!」
一方チサトは話すだけでもやっとだった。まずは機体に慣れさせるのが先決だった。
チサトもシンジと同様に筋は良かった。数日経つと操縦方を覚えて戦闘訓練に移った。宇宙に放り出されたパネルをペイント弾で攻撃すると言う訓練だった。
チサトのスター・ブレイド05はどのナイトよりも武装が多く、艦載機やダミーなどを駆使して敵を翻弄、さらに肉眼からもレーダーからも消える『ステルス・レイズ』機能が付いている。
しかしその分使い勝手が難しく操縦しながら装着された複数の武装を同時に使いこなすとなるとかなりの技術が必要となる。
『命中率65パーセント、まだまだだ。闇雲に撃てば良い訳じゃない!』
「はい!」
チサトは操縦桿を握り機体をUターンさせた。
「やっぱりチサトには難しいんじゃないか?」
シンジは思うがチサトどうしてもこのナイトが良いと言って聞かなかった。なぜならこのナイトは写真でしか知らない母親アヤノ・ゴウの形見だったからだ。
シンジを身ごもってからは引退、別のクルーが受け継いだが結局辞めてしまい長い間使われていなかった。
「いや、チサトちゃんも上達振りは早い、命中率も大分上がってきてる…… 成長だけならシンジ君より早いくらいだ。」
「マ、マジかよっ? オレも訓練しないと!」
「君のナイトはまだ戻って来てないぞ」
「うっ……」
シンジは何も言えなくなるとホークは微笑する。
数時間後、訓練は終了しシンジとチサト食事を終えて眠りに就いた。
しかしその明け方、ホークはスター・キャッスルにこっそりとやってきて人物を待っていた。そして扉が開いてその人物がオペレーション・ルームに入ってきた。
「やぁ、待ってたよ。でも本当にいいのかい?」
その人物はコクリと頷くと右手に持つナイト・クルーが持つ事を許されたライセンスが持たれてていた。
「さぁ早速練習に行こうか……」
ホークはその者を連れて表に出ていった。
翌日、シンジはチサトに揺すられた。
「お兄ちゃん起きてぇーっ!」
だがシンジは起きなかった。
するとプロメテスは背中からフライパンを取り出すとシンジの頭を殴りつけた。
「痛ぇえ――っ?」
シンジは飛び起きた。
一発で目が覚めて痛みの走る頭を抑えるとフライパンを持つプロメテスを睨みつけた。
「テ、テメェ…… バラされてジャンク屋に売り飛ばされてぇかッ?」
「そんな事よりこれ見てぇ!」
チサトが出したのはホークからの手紙だった。内容はこう書かれている。
『シンジ君へ、これから5日間私用で抜るが必要な事はプログラムを残してあるのでチサトちゃんの訓練は君に任せる、君の01も昼頃には戻ってくるはずだから君も訓練をしておくようにな。
PS・5日後に試合が決まったからそのつもりで、
ホーク・フレイ』
「5日後に試合ッ? 聞いてねぇぞ!」
シンジは目が飛び出るかと思った。
チサトもどうしたら良いのか迷ってしまった。
「ど、どうしよう〜」
「どうしようって…… 仕方ねぇな」
シンジはホークに連絡を入れた。
『ああ、シンジ君か?』
「シンジ君かじゃねぇよ! 一体どういう事だよ?」