スターブレイダ―ズ
クラスチェンジ・バトルは公式戦と同じで出撃ナイトに制限は無いが登録した5人しか出場できない、4人でも出撃できない訳では無いがどうせならフルメンバーで出たいと思っていた。
シンジ達がスター・キャッスルにいる頃、レナは大学の食堂でシーラと昼食を摂っていた。
今のこの時間だけは年上年下は関係なく早い者勝ちの争奪戦場となっていた。
そんな中、レナは人込みを掻き分け最前列に到着、戻ってくる時も髪の毛がボサボサになってすでに自分の弁当であるバスケットを持って待っているシーラの元へやって来た。
そして屋上にやってくるとシーラは自分のランチボックスを開けた。シーラの昼食はミックスサンドに紅茶だった。
「そうでしたか、大変ですわね……」
「そりゃスポンサー側にしちゃ仕事だろうけど、私達だって一生懸命やってるわよ」
レナは牛乳のパックに刺さったストローに口をつける。
「はぁ〜、どこか良い所ないかしらね〜」
「分かりましたわ!」
「えっ?」
レナの独り言にシーラは両手をポンと合わせた。
「でしたらスクレイア・グループが全面援助いたしますわ」
「ええっ、ちょっと待ってよ! 私そんなつもりで言ったんじゃ……」
「こうしてはいられませんわ。今からお爺様に頼みます」
「シーラ! ちょっと待ちなさいっ!」
抗議の声を放つレナを背後にシーラは携帯電話を取り出した。
大学が終わりレナはスター・キャッスルにやってくるとシーラの事を話した。
「あっはっはっ! さっすがシーラちゃんだぜ!」
話を聞いたシンジは大声を立てて爆笑した。
「スクレイア・グループのご息女と友達だなんて、2人供すごいわね」
シーラの実家であるスクレイア・グループは地球でも5本の指に入るほどの大企業で様々なメディアでその名は知れ渡っている、そして近年進化するSSBにも力を注ぎ、数あるナイト・チームにも資金援助をしてくれているのだと言う。
「でもほとんどプラチナとかゴールドとかだろ? オレ達はスチールだぜ、昔ならともかく今は資金援助してもらえる立場じゃ無いだろ」
「そこが問題なのよ。あの子世間知らずな所あるから……」
するとレナのポケットからコール音が鳴り響いた。ポケットから携帯を取り出してみるとそれはシーラからだった。
「もしもし、あ、シーラ? ……えっ?」
そのままレナは固まって動かなくなった。すると電話から耳が離れるとまるで油が切れたロボットのように首を動かしてシンジ達を見た。
「どうした?」
「シーラ…… ОKだって……」
「何がだよ?」
「資金の事……」
「はああっ?」
一同は驚いた。
さらに今表に来ていると言うのだ。
シンジ達は外へ出ると外には有名人が乗ってそうな黒塗りの車が何台も止まっていて黒いスーツとネクタイ、そしてサングラスをかけた大柄な男達が20人ほど立っていた。
その真中には携帯を持ったシーラがいてニッコリと笑っていた。
シンジ達はシーラと黒服の男達を数人スター・キャッスルのオペレーター・ルームに連れて行くとレナはさっきの電話の事を確認した。
「それで、スクレイア・グループが資金援助をするとかどうかで……」
「はい、その商談にきました」
シーラは笑顔であっさりと言った。
「でもねシーラ、あの時は本当にそんなつもりで言ったんじゃなくて……」
「お爺様が言ってました『思い立ったが吉日、即行動を起こせ』と……」
「何とまぁ……」
「すげぇ爺さんだな……」
ホークもシンジも互いの顔を見る。
「でもやはり条件がありまして……」
シーラの祖父は孫の友人ならば資金援助を断る訳にも行かない、
しかしSSBの資金援助はビジネスと同じでスポンサーからの投資高ければ高いほどそのチームは腕を認められスポンサーのCMにもなる、
ビジネスである以上は遊びでやる事は許されない、投資した所でそのチームが弱ければ金をブラックホールに投げ捨てるようなものであると、
「手厳しいな……」
「でも約束はしてくれるんですよね?」
「ええ、信用できるチームであればそれがたとえブロンズやスチールでも投資の約束はしてくれるそうです、丁度ブロンズの方にもう一組、投資して欲しいと言うチームがありまして、そのチームと戦って勝つのが条件です」
「ブロンズ? 私達スチールよ!」
「いや、オレ達だっていずれはブロンズに行くんだ。ブロンズってところの実力は見てみたいぜ!」
「アンタまたそう言って……」
「お前の言いたい事は分かってるよ…… それでシーラちゃん、その投資して欲しいって言うチームってどこだ?」
「はい、スナイパー・コンドルです」
「スナイパー・コンドルか…… 聞いた事があるぞ、確か遠距離攻撃用のナイトを使う狙撃チームだ」
「狙撃か……」
「詳しい説明のデータは残しておきますね」
シーラが右隣の黒服の男を見ると男は軽く頷き懐から1枚のメモリーディスクをテーブルの上に差し出した。
シーラはスター・ブレイダーズに見送られ表にやって来た。
「シンジさん、レナさん、そしてみなさん、頑張ってくださいね」
そう言うと車に乗り込み倉庫を後にした。
「なんと言うか、すごい子だったね……」
「本当に変わってなかったなシーラちゃん、まぁそこが可愛いんだけどな」
「フン!」
今のシンジの言葉を聞いたレナは目を吊り上げてシンジの足を踏みつけた。
「痛ってぇッ、何しやがるっ!」
「デレデレしてみっともないわよ! こっちは活動資金が掛かってるんだからもっと真面目にしてなさいよっ!」
「まぁまぁ、とにかくこのメモリーディスクを見てみよう」
皆もう一度メインルームへ戻ってくる、コンピューターにセットして画面に表示するとそこには試合内容が書かれていた。
「えっと…… 試合日時は一週間後、場所はヴィーナス・29、ルールは5対5の…… って、ええっ?」
「5対5? オレ達4人だぜ!」
「そう言えばシーラって私達のチームの人数知らないんだわ!」
「それじゃどうするの?」
皆何も言えなくなった。
人数の足りなさはどうしようもないのでとりあえず特訓が始まった。
スター・ブレイダーズは攻撃に関しては優れたチームワークを誇っていた。それは昔から兄妹同然に育った者達だからこそ出来るコンビネーションだった。しかし……
「やっぱり防御に難があるな、04が使えれば……」
ホークはジレンマに顔を顰める。
練習終了後、4人はホークに防御がイマイチ報告された。
まず一番機動力がある02は相手の攻撃をほぼ回避しているがそれも直線的な攻撃での話、ホーミング機能付きのミサイルはレーザー・バルカンで落とす事はできるが高速で動きながら撃ち落とすのは今のレナには難しく、
まして武装の多い05でも全てを相殺する事は不可能で、まして武装の多さで回避が間に合わず、
03も攻撃後の隙が大きすぎて反撃を受けやすく、
01に至っては動きにムラがあり過ぎて問題外だと言われた。
「それぞれの防御に関しては今後の課題としてメニューに加えようと思う、しかしこれでは金がいくらあっても足りないぞ……」
ホークの棘のある言葉に一同は頭を垂れる、
翌日、レナは大学にやって来てシーラを探した。