スターブレイダ―ズ
それから3日後、
スター・ブレイダーズはサムライ・ジパングの挑戦を受ける為に戦いの場に向かっていた。
『もうすぐ指定の場所だ。3人とも準備はいいか?』
司令室ではホークが無線で連絡した。
「了解、いつでもいいぜ。」
制服に着替えた3人はナイトに乗り込んで起動スイッチを押した。
指定場所にはすでに対戦相手であるサムライ・ジパングの母艦である黄金に輝く天守閣を思わせる戦艦『大和』が待機していた。
「うわー、戦艦まで時代遅れだな……」
シンジは大和を見て顔をしかめた。
『中々いいデザインじゃないか、私は結構好きだぞ。』
「小父さん時代劇好きだものね……」
『ハヤトも結構好きだったぞ…… そうだ。勝ったらこのスター・キャッスルを賞金でああ言うデザインに……』
「しなくていい! オヤジ達の思い出のなんだろ?」
シンジ達がそんな事を話していると通信が入った。
それはサムライ・ジパングからの通信だった。ホークは通信回線を開いた。
そこに写っていたのは30代前半の男だった。
キリリと引き締まった顔立ちに鋭い眼光、黒く長い髪を一括りにして黒と白の着物と袴を模した専用スーツを着込んだ彼こそがこの武蔵の艦長にしてナイト・クルーのタケシ・ムシャノコウジだった。
『この度は拙者の決闘を受けていただき誠に感謝いたす』
「あ、ああ…… どうも、」
シンジは頭を下げた。
『しかし、この度は試合は試合でも途中棄権は認められぬ、どちらかが戦えなくなるまで戦う、依存はござらんな?』
「それはもう、一応そのつもりで来たんスから」
『ならばこちらも遠慮は不要! ミワコ! 戦場の展開を!』
『了解!』
すると今度は画面の右上に小さい画面が映し出され美しい女性が映し出された。レナと同じくらいだろう、藍色の白い鶴の刺繍の入った着物を着て頭はストレートロングヘア、赤い髪留めを着けた和風の美女だった。その美しさは別のモニターで見ていたレナやチサトも同姓とは言え空いた口が塞がらなかった。
するとスター・キャッスルとヤマトの間に公式戦の2倍はあるだろう巨大なバトル・フィールドが展開された。
『いざ、尋常に勝負ッ!』
戦闘開始の合図が鳴り響くと真っ先にフィールドに飛び出したのはサムライ・ジパングの方だった、大和の一部から勢いよく飛び出したのは船首が大きくて長く、2枚の翼に4枚の尾翼の大型ナイトだった。大きさはスター・ブレイドの3倍は越えていた。
『フハハハッ! 見たか、我が愛刀『ナガミツ』をッ!』
その巨体に思わず圧倒される3人、しかしシンジは首を思い切り振ると気合を取り戻した。
シンジは確かにナイトの大きさに肩をビクつかせた。しかしやがて首を振って平常心を取り戻すと画面の2人を見た。
「別に大きければいいってモンじゃねぇ…… 行くぞ2人供!」
『『了解っ!』』
シンジ達は一斉にエンジンを起動させた。
「スター・ブレイド01、発進ッ!」
「スター・ブレイド02、テイク・オフッ!」
「スター・ブレイド05、行きますッ!」
3機のスター・ブレイドは勢い良く宇宙に飛び出し、3対1の火蓋が切って落とされた。
試合開始から僅か数分後、
シンジは歯を軋ませて眼前に聳える巨大ナイトに圧倒されていた。仲間達はもういない、レナとチサトはすでにフィールド・アウト、スター・キャッスルに回収されていた。
「く、くそっ!」
勢い良く飛び出し、最初に出たのはスター・ブレイダーズだった。
シンジのスター・ブレイド01のインパルス砲とチサトのスター・ブレイド05のミサイル砲がナガミツを攻撃した。しかしナガミツは避けるどころか動こうともせず全弾命中、勝負ありと思いきや敵のライフ・ゲージは満タンでちっとも減っていなかった。
爆煙の中から飛び出したナガミツの船首が左右に分かれると光が集まり機体とほぼ同格の大きさの光り輝く巨大な日本刀型の刃が出現、ブースターが勢い良く火を噴くと今度はスター・ブレイド02にも匹敵する速度で突進してきた。
思わず回避に遅れてしまったスター・ブレイダーズはライフ・ゲージを大きく削られ、耐久力の少ないレナがフィールド・アウト、反撃に出ようと思ったチサトが操縦桿を動かそうとした瞬間背後に回ったナガミツの光の刃がチサトの戦闘機を切り裂いたのだった。
あっという間に圧倒的不利を通り越し、絶望と言う状況に追い込まれたシンジには考える余裕すらなかった。
自分の呼吸が大きく感じ取られ敗北の恐怖がシンジの心を染めていた。スター・ブレイド01のライフ・ゲージは残り少ない、あと一撃喰らえばお終いだろうその状況は自分にも相手にも分かっていた。しかしそのような状況でもタケシは仕掛けようとはしなかった。
一方、回収されたナイトから出てきたレナとチサトはオペレーター・ルームに戻ってきた。
「ごめんなさいホーク小父さん、負けちゃいました……」
チサトは両肩を震わせて泣いていた。レナも余程ショックだったのだろう、ホークと顔を合わせられずにいた。
「仕方ないさ、今回は相手が悪かったんだ…… しかしどうなってるんだ?」
ホークはモニターに写る相手のナイトを見て情報を分析していた。
「あの外見からしてパワー重視と言うのは分かるが……、あの巨体で機動力が優れると言うのが解せない!」
ホークは顔を顰める、そしてマイクを取るとシンジに連絡を入れた。
「シンジ君、残っているのは君だけだ。しかし下手に突っ込むよりも少し様子を……」
しかし肝心のシンジはホークの声も聞えないくらいに緊張していた。
こんな感覚は初めてだった。これは試合と言うより死合、いくら人が死なないルールがあるとは言え仲間2人があっさりとやられてしまい圧倒的な強さを誇るサムライ・ジパングはスチール・ランク最強と言われるだけの事はある。
「う、うおお――ッ!」
シンジはプレッシャーに耐えられなくなり敵に突進した。
しかしナガミツはそれを予測していたかのように高速で回避、後ろに回りこんだ。
「やべっ!」
やられる! そう思い目を閉じるが恐る恐る見て見ると敵はこちらを標的にしたまま動こうとしなかった。
「なんで?」
シンジは疑問に思った。
しかしそれはスター・キャッスル内のクルー達も同じだった。
「レーザーでも当てれば勝てたのに、負けて欲しくないけど……」
「おかしいですね」
レナとチサトも首を傾げる、
「もしかしたら……」
するとビアンカが何か分かったようにホークの隣りのコンピューターを操作し始めた。
「どうした?」
「ごめん、話し掛けないで……」
ビアンカは信じられないほど早く指を動かしてコンピューターを動かしてナガミツを解析した。
「分かった!」
今度は無線を取るとシンジのスター・ブレイド01に繋いだ。
『シンジ君! 聞いて!』
「ビアンカさん?」
『あのナイトはレーザー・ブレード以外の武装がまるっきり無いのよ!』
「ええっ?」
それには仲間全てが驚いた。
ナガミツは形状と大きさで本来はパワー重視のナイトと言う事がわかる、