御伽物語
そのせかいには神様がいて、人がいて、動物がいて、植物がいて
みんなみんな恵まれて暮らしていました。
ある日女神が生まれました。
せかいの総てが女神の誕生を祝福しました。
女神はとても美しく育ち、神様に見初められてお嫁に行くことになりました。
ところが、女神は突然姿を消してしまったのです。
神様は大いに嘆きました。
地上には神様の涙が雨となって降り注いでいました。
突如、魔王が目覚めて、せかいはたちまちのうちに真っ暗になってしまいました。
あちらこちらで色々なモノが壊れました。
神様は隠れ、人や家や動物や植物、このせかいの総てが恐れ戦き、ひれ伏しました。
そんなとき、光り輝く子供が生まれてきました。
せかいは「この子は勇者になるのだ」と大いに歓喜しました。
そうして十数年が過ぎました。
勇者になるのだと言われた子供は聡明な少年へと成長しました。
心には正義の魂が宿り、民の希望通りに魔王を倒すべくひとり、立ち上がりました。
いくつもの試練や苦難を乗り越えて少年は魔王の元へと辿り着きました。
ですが魔王を幾度も斬り伏せようとしても全く歯が立たず、少年は殺されてしまいました。
せかいは再び闇に飲み込まれ、人々は落胆し、魔王は涙を溢しました。
さらに数十年が過ぎ、少年のおはなしは悲劇として語り継がれ、
人々は勇者を乞い、望み、待ち続けました。