抜き打ちゲーム(4/10編集)
クロードは電車に乗ると読書するのが日課になっている。しかし、いつもと違ってあまり身が入らなかったから、すぐに止めた。何とは無しに窓の外を眺めているうちに寝てしまったようだ。
ふと目が覚めたら、相変わらず、クロードの他に乗客は居なかった。
そもそも、前方の車両が無かった。車掌すら居ない。なのに電車、一両きりのそれは、ある程度のスピードを保ったまま走り続けた。
車内がやけに白っぽくて眩しかった。その中を、黄色い蝶が一匹飛んでいった。窓が全て開けられていて、絶えず温かい風が吹き込んでいた。一言で言うなら『幻想的』といったところか。
窓の外は眩しい空のせいであまり見えなかったが、おそらく、川の傍だったのだろう。水の匂いがしていた気がする。
どのくらい経ったかわからないが……急に声をかけられた。
「――すみません、お隣空いてますか」
顔を上げてみれば、美しい女性が……。
作品名:抜き打ちゲーム(4/10編集) 作家名:狂言巡