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充溢 第一部 第二十二話

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第22話・3/3


 その晩、恐ろしい夢を見た。否、思考した。
 自分が、もし、ポーシャに出逢わなかったら。
 自分は、自分の自我のあまり、人の常識に従うことが出来ないだろう。常識と言われるものが、人々の都合の良さを起源として、現時点での合理性を無視する事だと分かっているから。
 常識がなくては人として上手く行かない事は、身を以て知っている。しかし、それに伍する能力もない。
 困った時に、困ったと叫んで、それを聞き入れてくれる者が周りにいるだろうか? そして、それがいない時、全ては当人の責任に帰するだろう。
 ある人が言う所の普遍的な人間愛というものの本質は何だろうか? それを持っていると信じている人が、持たざる者に対して向ける、その眼差しの恐ろしさが教えてくれるものを直視できるだろうか?
 初めに脱線した自分は、他の人間と、双方向でそれを理解出来ない。
 その中で、自分は生産的でいられるだろうか? それとも、自分自身に対して生産的であればよいのか?

 今、自分には使命がある。彼女がいなかったら、自分はそれを見つけ出せただろうか?
 今は恵まれている。人の手によって。それがなかったとき、自分は存在を許されるだろうか。自分自身の能力で、自身の存在を許せるだろうか?
 人生は不安定だ、たった一つのことを考えなければ、存在の許諾に悩まされずに済むのだから。
作品名:充溢 第一部 第二十二話 作家名: