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ゴーストライター
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百戦錬磨 第三話

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入学式当日。
今日もまた、春とは思えないほど暑く、そして快晴の日になった。
入学式の警備は最も危険度の高い校門付近と講堂内、講堂付近は皇極家の人間と学園の戦闘学課および軍事学課そして警護学課の三年生とさらにその補佐として先にあげた三学課の二年生各Aクラスの生徒たちが警備することになっている。
本来、二年生はこういった警備には参加しなくてもいいことになっているのだが、戦闘学課のAクラスは対外的に学園の中でも最も有名で実力があるとされていることから見栄えの良さ、あるいは、見栄を張るために恰好だけのお飾りとして警備に参加している。
それに付き合わされるような格好で戦闘・軍事・警護学課の二年生B~Gクラスは強制的に警備に参加させられているのだ。
しかも、警備の仕事ならまだマシだったかもしれないが、すでに学園の警備は十分なので町を、ということで町中を巡回しなければならないのだ。
暑い中、町中を歩き回るという、まさにいい迷惑。
そのため和斗たちの班、いや、正確には和斗たちの班の一部は巡回をサボって近くの喫茶店“休患”で勝手に休憩していた。
「ふぅ~。生き返る~」
生徒たちと同じように巡回している学園の教師陣に見つからないように店内の奥に陣取った和斗たちはクーラーの効いた店内で体温を下げる作業をしていた。
店内にはまったく人がおらず、貸切状態である。
「まったくだな・・・」
「・・・そうだね・・・」
和斗に賛同する孝明と水月。二人もまた巡回をサボって和斗について来ていた。
「けど、まさか・・・巡回する班に篠原だけじゃなくて突然、利奈ちゃんも入ってくるなんてな」
「そうなのよね~。あたしもびっくりした」
利奈は本来、学園周囲の警備側として配置されていると昨日、説明していたはずだったのだが、今朝のホームルームの最中に突然、電話が掛かってきたと思ったら利奈も巡回に参加することになったと説明し始めたのだ。
一応、学園側の了解も同行する教師であり、戦闘学課主任でもある篠原も了承しているのでその点については問題ないのだが、和斗たちにとっては大いに問題があった。
「利奈ちゃんが一緒だとマズイな・・・あぁ見えても利奈ちゃんはかなり強いからな」
孝明が腕を組みながら考え込んでいる。
「確かにね。確か言い寄ってきたナンパ男五人を一瞬で倒したって言う噂があるぐらいだからね」
「・・・しかも、勘が鋭い。俺たちの居場所が感づかれる可能性も十分あるんだよな~」
和斗も考える様に顎に手を当てているが、喫茶店のメニューを片手に考えていても真剣に考えているようには思えない。
「それにしても・・・あいつらは真面目だね~」
喫茶店のメニューを置いて和斗は話題を利奈から夏樹たちへ変える。
「まぁ、特に佐奈は結構、真面目ちゃんだからね~」
「それは・・・見たまんまじゃないか?」
「言えてる!」
そこで三人は互いに笑い合う。そこにウェイトレスがやってきた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
最近、入った新しいバイトなのか、和斗たちはそのウェイトレスの顔を知らなかった。そして、そこに当然のように話しかけるのが、孝明である。
「あ、君は新しく入ったバイトの子?」
自分よりも年上なのか年下なのか分からない状態で“子”と呼ぶその度胸はある意味、見習わなければならないかもしれない。
「はい。昨日から新しくここでバイトをすることになりました、鈴川です」
孝明の言葉に初々しく可愛い笑顔で返す新人バイトの鈴川。その笑顔はここの制服とよく似合っていた。
ウェイトレスの制服はかなり可愛いデザインなのだが孝明に言わせれば「エロさに欠けるな」と言って以前、ここの店長と話し合っていたことがある。
「なるほど、よろしくね、鈴川さん」
ここぞとばかりに孝明は優しそうな笑顔を向ける。
「はいっ!」
鈴川はそれに対しても笑顔で返す。
(・・・いっつも最初の方こそ好印象なんだけどな・・・孝明の場合・・)
和斗はどうせこの関係も一か月持たないと考えていた。いや、むしろ今までのパターンからそうなると確信していた。
「えっと、それで注文はお決まりでしょうか?」
「あっと・・・んじゃ俺はレモンソーダで」
「あたしは・・・ダージリンで」
「俺は・・・バイオレンス・デンジャーパフェ」
「「「えっ!?」」」
最後の孝明の注文、バイオレンス・デンジャーパフェで他の二人と鈴川の動きが止まる。
「ちょっ・・・お前・・・勇者だな・・・」
「えぇ・・注文した人間をことごとくトイレ送りにしたあの化け物に挑むなんて・・・孝明・・あんた、見直したわ」
「え?そうか。別に普通だろ?」
別段、おかしくない、と言った風な言い方をする孝明だが、実際に今までこれを注文した人間全員がトイレ送りにされ、今ではこれを注文する人間はいないと言われているほど。
「あの・・・お客様・・・本当に、ご注文はそれでよろしいのですか?」
さすがの鈴川も孝明に注文を訊き直している。
「あぁ、問題ない」
「・・・分かりました。では、ご注文を繰り返させていただきます。レモンソーダが御一つ。ダージリンが御一つ。バイオレンス・デンジャーパフェが御一つ。以上でよろしかったでしょうか?」
「はい・・・っておい!和斗!水月!」
孝明が鈴川を見て急に驚いたように声を上げる。
「どうした、孝明!?」「どうしたの!?」
二人同時に孝明の視線の方向にいる鈴川・・・いや、正確には鈴川のさらに奥、ガラス張りになっているところへ視線を向ける。
そこには篠原と利奈という二人の教師陣が和斗たちを見ていた。
「やべっ!逃げるぞ!」
三人は二人を見つけるや否や蜘蛛の子を散らす勢いで立ち上がる。
和斗はテーブルに片手を付き、勢いを殺さずそのままテーブルを乗り越えて、孝明は和斗とクロスするように、水月はテーブルの下から一目散に裏口目指して逃げていく。
「・・・えっ?」
鈴川も三人のあまりに早いその動きに思考がついていけなかった。その俊敏さはさすが戦闘学課というべきものなのだろうか。こんなところでその技術を使うというのも間違っているが。
「―――――あ、あいつらーーーー」
ガラス張りとなっている外から篠原のそんな怒声が店内に響いたがその時にはすでに三人とも店内から脱出し、その身はすでに町へと流れていた。

「――――な、なんで俺だけ!?」
和斗は一人、町中を走っていた。いや、後ろから和斗を追いかけている篠原を加えれば二人ということになるが。
先ほど喫茶店では上手く逃げおおせた和斗たちだったのだが、巡回を再開し、路地を曲がった瞬間に篠原と利奈に偶然、出くわしたのだ。
そこからは言うまでもなく三人とも一気に逃げ始める。和斗は一気に引き返し、孝明は二人の傍を通り抜けて反対側へ、水月は脇道へ逃げ込んだ。三者三様の逃げ方で篠原と利奈を困惑させる魂胆だったのかもしれないが、他の二人など目もくれずに篠原は和斗を一直線に、利奈は孝明を追い始めたのだ。
そこに思考によるタイムロスはなく、いわば、和斗とほぼ同じタイミングで篠原は走り始めたということ。
そして、今、現在に至る。
「貴様が主犯だということなどお見通しだ!」