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ゴーストライター
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百戦錬磨 第三話

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言うが早いか先ほど見せたあの瞬間移動にも似た移動で瞬時に男たちの集団の中に入り込む。
「――――え?」
男たちが気付いた時、すでに、男たちの上半身と下半身は真っ二つに切断されてしまっていた。
反撃する暇もなく。気付き時間もない。それは本当に強い異能の力だった。
それほどの力を持っている和斗がなぜ、Gクラスに居るのか。

「―――俺のこの力を見た奴らを見逃すはずがねーだろうが」

十数人の大の男たちの鮮血で真っ赤に染まった路地。それはまるで、和斗が少女を追っていた時に通った路地の姿に奇しくも良く似ていた。
和斗は先ほど電話をしていた男の死体から真っ赤に染まった携帯電話を取りだし、その中身を盗み見る。
だが履歴や着信などを確認しても幹部の人物と思われるような人物とのやりとりにはすべて「山田太郎」や「桃太郎」など明らかな偽名を思わせるものばかりが並んでいた。
「・・・所詮は尖兵・・・いや、使い捨ての駒だったか」
意味のなくなった携帯電話だったが、和斗はその携帯電話をポケットの中に仕舞い込む。
(それにしても、さっきの電話。撤退って言ってたな・・・なぜ?撤退命令を?)
理解不能な命令をした電話の主。なぜ、撤退命令を下したのか。それが和斗には分からなかった。
(・・・まぁ考えたところで答えが見つかるわけじゃないか)
和斗は男たちの増援が送られてくる可能性を考慮して、いち早く行動を開始し、少女の下へと駆け寄り、背中に担ぐ。
そして、路地から去ろうとした時、もう一度、その路地を振り返る。
鮮血の海の近くに二人の女が倒れたままになっていた。
「・・・ったく、俺も人が良いな」
苦笑しつつ和斗は二人が血に触れないように血の海から少し離れた場所に静かに寝かせる。
(今ならこの二人を調べられるか?)
そうも考えたが、いつ増援が到着するかも分からないこの状況で余計なことをしている場合ではないと考え直し、和斗は今度こそ、その場を去って行った。
しばらく歩き続け、後は路地一本抜けるだけで裏町から出られるというところで和斗は一旦、足を止め、少女を起こさないようにゆっくりと地面に横たえ、休憩する。
「・・・・ふぅ・・疲れた・・」
いくら少女が軽いと言っても裏町からかなりの距離を歩いてきたのだ。疲れないはずがない。
(・・・結局、あの二人が誰なのか分からなかったな)
二人がどこに所属しているのかを調べようとしていたところに男たちがやってきてそれどころではなくなったので結局、調べられなかったのだ。
(やはり、木山家だったのか?だが、ここは皇極家の管理している土地であって木山家が出張ってくることはないはずなんだが・・・)
和斗たち住んでいる町“皇王宮”はその名が指し示すように皇極家の管理している土地であって木山家の土地ではない。
やはり同じ組織に属していようとも自分の管理している土地を勝手に他の人間に踏み荒らされることが気に食わないのか、他の家が管理している土地へ入る際には許可の発行などかなりのややこしい手続きが必要となっている。
それだけでなく、他家の者たちが入ってきた場合、監視がついたりあるいは、行動に制限が付くことがほとんどである。
(・・・どうにもきな臭いな)
和斗はその天性の勘で今回の出来事が普通ではない、ということを感じ取っていた。先ほどの男たちの行動や死体など考えれば考えるほどに不可解なことが多すぎるのだ。
そして、一番不可解なことは和斗の隣で気絶したまま寝入っている白く長い髪の少女へと視線を移す。
(なんでこんな女の子にあれほどの大人数を捜索に充てていたんだ?それこそ捕まえるだけなら一人、多くても三人いれば十分だろう)
相手はプロレスラーのような大男であるわけでもなく、世界中に名が知れ渡っているほど有名な異能者であるわけでもなく、小学生程度の身長しかなくガラス細工のような手足の華奢な女の子だ。
見た目から察すると明らかに戦闘力を有していそうな感じはない。もちろん、異能が強力であるという可能性も十分あるのだが、それならそれでこの土地を管理している皇極家が動く方がよほど自然だ。
(もし、あの男たちや二人の女の子が木山家の人間だったとしたら・・・これは相当・・・)
和斗は思考しながら笑みを浮かべずにはいられなかった。
(面白いことになりそうだ)
和斗の浮かべたその笑みは今まで見せた笑みの中で最も冷酷で冷たい笑みだった。
その後、和斗は篠原や利奈、他の巡回中の知り合いに出くわさないように細心の注意を払いながら少女を担いだまま家へと向かった。