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ゴーストライター
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百戦錬磨 第二話

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時間は遡って四月十五日、午前九時。
国連北欧方面第一軍コペンハーゲン基地跡。
悠然と佇んでいた巨大基地はもはやその姿を有していない。
周囲の森林もかなりの規模で焼失してしまっている。基地の残骸や人の死体の焼け残りである骨が少々残っている程度の基地の跡地に国連の大規模な調査隊が派遣されていた。
公表されるのは通信の途絶えた午前四時三十分に発生した大規模な爆発事故に関する“支援”だが、実際のところ通信の途絶えた午前四時三十分に何が起こったのかを調査することが目的である。
国連軍上層部は国連軍有する基地が事故以外の何らかの理由で壊滅した、あるいは被害を受けたことを公表するわけにはいかなかったのだ。
国連軍は世間にとって世界最大規模の組織であり、尚且つ、派閥関係なく、すべての派閥の人々が所属している平和の象徴でもあったからである。
そんな組織が襲撃を受けたとなれば、必然的に世間の反応や各派閥の関係が悪化することは目に見えている。
今でさえ、各派閥の関係は険悪なのだ。これ以上、関係が悪化すれば、最悪、再び戦争ということにもなりかねない。
それだけは国連軍上層部も避けたかったのだろう。故に、名目は“支援”なのだ。
「・・・・これは・・・酷いな・・・」
調査隊の一人がその惨状を見て呟く。
「・・・調査っていっても・・・何も残ってないじゃないか・・・」
書類も機材もすべてが燃えてしまっている。そこから何かを探そうとしてもおそらく何も出てこないだろう。出てきたとしても、機材の燃えカス程度。
再生することはできまい。そんな時に調査隊の一人が大声を上げる。
「おい!生存者だ!」
調査隊の一人が基地の残骸の影に隠れている男の隊員一名を発見したのだ。おそらくはその残骸が爆風を凌ぐ盾の役割を果たしていたのだろう。
調査隊の面々はすぐさまその場所へ集まる。
大柄のその男は尋常ではないほどに震えていた。
「おい、もう大丈夫だぞ」
調査隊の一人が生き残っていた男の肩に手を置いた瞬間、男は奇声をあげて怯え、その手を払いのける。
「おい!大丈夫か!?もう助かったんだぞ!?」
調査隊が男の奇声に負けないように大声で生き残ったことを伝えようとするが、男は一向にそのことを聞かずただ狂ったように奇声をあげるだけ。
「何があったんだ!おい!」
隊員の一人が発した言葉に初めて反応した男。今までの男の震えや奇声が止まったことでその場に静けさが戻ってくる。
そして、男は語り始める。
「何が・・・あいつだ!あいつが!あいつらが!戻ってきたんだ!あいつらが!」
先ほどとは打って変わって男は気味が悪いほど青ざめた顔で調査隊に突然、勢いよく詰め寄る。調査隊の一人の男の両肩を掴んで激しく揺さぶる。
「ちょっ、おい!」
「あつらだ!帰ってきたんだ!あいつらが!終わりだ!世界の終わりだ!」
「待て!おい、あいつらって誰なんだよ!」
「神統軍だよ!帰ってきたんだ!あいつらが!」
その男の言葉に調査隊たちの空気が一変する。先ほどまで男を落ち着かせる立場にあった調査隊が逆に男に詰め寄る立場になってしまったのだ。
「嘘をつくな!神統軍は解散したんだぞ!」
「そうだ!戻ってきてたまるか!」
調査隊の多くの人物が神統軍という組織の帰還、あるいは復活を認めたくないのか、男の言葉を必死に否定している。
「戻ってきたんだよ!」
「・・・・本当なのか・・・?」
多くの調査隊が否定している中、調査隊の隊長が、静かに男に問う。その答えをしるべく、隊員たちは静かに男が口を開くのを待った。
そして――――男は言った。
「――――帰ってきたんだ。神将統合軍が!神従者が!」
その言葉は今までの中で最も重たい言葉だった。

四月十五日午前十一時。
国連軍大西洋方面第一軍ベルリン基地。
「・・・そうか・・・下がっていいぞ」
「はっ!」
豪華絢爛とは程遠い質素な椅子に深く腰掛けている軍服の中年男の言葉に従い、報告をするために入ってきた男は一度、敬礼をしてから部屋を去って行く。
男が去ったのを確認してから中年の男は深くため息をつき、報告書に纏められている文章を読み直す。
だが、読み直したところで、書かれている文字が変化するはずもなく、男は再び深いため息をついた。
「・・・神統軍・・・しかも、中堅どころがいきなりとは・・・」
(・・魔物の不自然な活発化、欧構と帝連の不自然な動きとそれに伴う統連の牽制、さらには聖王騎士団の不明瞭な資金の流れと入団者の不自然な増加に最近、裏の方で薬やら人身を売買して規模を大きくし始めた謎の組織。極めつけは神統軍の復活か・・・・)
さすがに国連軍の上層部に顔が利くだけのことはあって多くの情報が入ってくるようだ。その中には統連に負けず劣らずの帝連の動向や魔術派最大規模の組織である欧構のこともしっかりと耳に入っているらしい。
それだけに考えることが多すぎることが難点のようだが。
(・・・二年前、魔物の活発化と同時に現れた神統軍。統合軍の出現によって魔物との戦闘にしか備えていなかった各派閥は大打撃を受け、実質、壊滅した組織もあった・・・。政府が揺らいだ国も多かったが・・・まさか今回も・・・)
「・・・・わずか二年にして再び、世界に戦火が燈る。時代の節目に現れる魔物と統合軍・・・か。・・・まったく、今度は世界に激変ではなく、終焉を齎す死神になってくれそうだな」
男は自分の言った言葉に苦笑いして備え付けてあった電話機からどこかへ電話をかけ始める。その電話の相手は何度目かのコールの後、電話に出る。
「――――私です。動き始めましたよ、時代が」