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ゴーストライター
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百戦錬磨 第二話

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「あぁ?何があるっていうんだ・・・・よぉ?」
孝明の言葉の語尾があまりの驚きに狂ってしまい、疑問形なのか、それとも挨拶の一種なのか判別が難しくなっている。そうなってしまうことも仕方ないことだろう。孝明の背後には指をパキパキ鳴らして非常に嬉しそうな表情を浮かべている篠原が立っていたのだから。
「ほほう、高橋。貴様はそんなことを考えていたのか?」
「ふ・・ははは。そ、そ、そ、そんなことはあ、あ、あ、ありませんよぉぉ?」
無理をして笑顔を見せ、平然であることを示そうとしている点は評価できるがあまりにも挙動不審すぎて返って怪しい。
というよりも、どれだけごまかそうとしても一部始終を見聞きしていた篠原が孝明を逃すはずがない。
「没収だ!馬鹿者!」
ガンっという音が教室中に響き渡って孝明はその場に頭を押さえて蹲る。その間に篠原は孝明から奪った紙を懐に仕舞って利奈の代わりに教壇に立ち、明日の詳細を話し始めた。
「いって~」
「・・・孝明。お前、この生活を楽しんでるな~」
少し羨ましそうな目で和斗は地面に蹲り頭を押さえている孝明を眺める。
「ん?まぁ・・そりゃな。俺たちはいつこの生活がなくなっちまうか分からないんだ。それが一週間後かあるいは明日か。だから、今、楽しんでおかなくちゃな」
孝明はニヤッと笑って頭を押さえながら自分の席へ戻る。
(・・・いつ、この生活がなくなっちまうか分からない・・・・か。まぁ、確かに俺たちはいつまでも、この生活にいられるわけじゃない・・・)
和斗たちは異育に通っている。これの意味するところは言わば軍隊の育成学校のようなもの。戦争が起きれば例え学生であったとしても、前線に送られる可能性は非常に高い。
特にAクラスの生徒たちは異能も頭脳も優秀なものたちばかりなのでGクラスの和斗たちよりもさらに激しく厳しい戦場に送られることになるだろう。
その事実に加えて今現在の世界の均衡は危ういものとなってしまっている。
異能派も魔術派も反異能派も反魔術派も生粋派もすべての派閥がお互いを牽制し合っている状況にまで陥っている。
何かが起きれば再び世界規模の戦争に発展することは間違いない。
異能派は比較的魔術派とは友好的ではあるが、それも所詮、他の派閥と比べればというだけで実際はそれほどでもない。
故に、いつ戦争が起こってこの日常が終わりを迎えてしまってもおかしくないということなのだ。
(・・・俺たちは・・・・か)
和斗は頭の中で孝明の言葉を反芻する。
「さて、以上だが、何か質問がある者はいるか?」
一通り説明し終わったのか、篠原は教室中を見渡す。しかし、誰も質問がないようで教室は静まり返っていた。
「ふむ。質問はないようだな・・・。では、今日はここまでだ。事故遭わないように気を付けて帰るように」
日番が号令をかけ、利奈と篠原は教室を出ていき、生徒たちは思い思いの行動をとり始める。
「和斗、お前、何か用事あるか?」
突然、考え事をしている和斗に話しかけて来たのは孝明だ。孝明の後ろには夏樹、水月も一緒にいる。いつもの幼馴染メンバーだ。潤は大抵、女の子たちと一緒に帰るので和斗たちとは別々に帰っている。
「あぁ、いいぜ、帰るか」
和斗は机の横に掛けていた学生鞄を肩に引っさげて孝明の元へ行く。そして、孝明たちのもとへ着くと和斗は最後の幼馴染の姿がないことに気が付く。
「ん?圭一はどうした?」
「どうせ、あれだろ?女の子をナンパしにいってるんじゃないか?無駄なのに」
和斗が揃ったところで孝明たちは歩きながら外へ向かう。一行はいつものように巨大な校舎から外へと出る。と、同時に爆音が戦闘学課の校舎周辺に響いた。
黒煙が濛々と軍事学課の校舎方面から上がっていた。
「あ~、いつものか」
黒煙が上がる軍事学課の方向を眺めながら孝明がため息をつく。周辺の戦闘学課の生徒たちもこの爆音には一切、気にした様子はなく、いつも通りの日常を謳歌している。
「ってことは、圭一の奴、こりゃ絶対に逃げ出してナンパに行ってるな」
「あぁ、予想が確定事項になっちまったな」
「もう、和斗。まだ本当に圭一がナンパしているとは限らないでしょ」
夏樹が圭一を庇うような発言をしているが、その口調に自信のなさが垣間見える。おそらく夏樹自身、こう言っているものの、確信がなにのだろう。
「まぁ、どっちだったとしても圭一が学外にいるのなら待っとく必要もないし、どっかに遊びに行こうよ!」
水月が急に元気を取り戻したように他の三人を遊びに誘う。
「遊ぶったって・・・どこで遊ぶんだよ。また前みたいに鬼ごっこは嫌だからな」
「あぁ~、あったなそんなことも・・・あれはきつかった・・・」
遠い過去を思い出すように雲一つない鮮やかな蒼空を眺める孝明。
「・・・そうだな・・・きつかった・・・」
それに追従するように和斗もまた雲一つない空を眺め始める。この戦闘学課で訓練を積んでいる男二人がきついと漏らすほどなのだ。一体、どんな内容の鬼ごっこだったのか。逆に興味が湧いてくる。
「そう?あたしは全然、大丈夫だったけど?」
「・・・それは水月が“司令塔”とかいうよくわからない役柄だったからでしょう。あれは私も体が持たなかったわ・・・」
水月の味方だと思われていた夏樹でさえもさすがにその鬼ごっこはもう二度としたくなかったのか、きっぱりと反対側へ移動する。
「水月、お前の百合友もついにお前の要求するハードなプレイについていけなくなったようだな」
「誰が百合友だっ!」
和斗の冗談に瞬時に反応した夏樹の拳が和斗の顔面にめり込む。
「ぬあぁぁぁぁ!」
そして、再び顔面を押さえながら地面を転がる和斗。なるほど、日にこう何度もこういった光景を見ているとさすがに慣れていくものらしい。
「もう・・。和斗の馬鹿・・・」
夏樹はそう呟き、三人を置いて先に一人で校門を出て行ってしまった。取り残されるのは地面で悶絶している和斗とため息をつく水月、孝明の三人。
「はぁ~。まったく、お前は真顔で冗談言ったり、突然、悪乗りして来るからな。もう少し冗談の言い方とかってやつを学んだ方がいいんじゃないのか?まぁ、夏樹ちゃんの方は俺がうまくやっておいてやるよ」
肩をすくめ、呆れ顔で、だが、しかし、どこか頼りになる表情を見せて孝明も夏樹を追っていく。
「まったく・・・和斗も少しは夏樹の気持ちを考えてあげたら?はい、これ」
水月が和斗に水色のハンカチを差し出す。和斗もそれを素直に受け取る。
「ったく・・・冗談なんだから軽く受け流してくれてもいいじゃねーか・・」
和斗は文句を漏らしながら受け取ったハンカチで顔を拭う。
「それで、水月よぉ、二人になっちまったが、どうする?一緒にホテルでも行くか?」
和斗が笑いながら軽いノリで水月に問いかける。
「ばっ、馬鹿じゃないの!?」
顔を真っ赤にしながら水月が反応する。
「ははは。冗談だから。けど、この後どうする?」
「二人で久しぶりにプリクラでも撮る?」
そこに先ほどの水月の姿はなく、いつもの笑顔の水月が和斗の目の前にいた。
「あぁ、それもいいかもな」