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ゴーストライター
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百戦錬磨 第二話

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「うぅ・・・酷いよ、和斗ぉ・・」
教室の片隅で子供のように体育座りをしながら泣いているのは水月だった。
あの講堂での一件の後、篠原からなんとか逃げていたのだが、運悪く利奈に見つかって、そのまま篠原の元へと連行されたらしい。
しかも、利奈を水月の下へ向かわせたのは和斗の思惑だったようで、先ほどから和斗に対して恨み言を漏らしている。
さすがに孝明や潤とは比べ物にならないほどこってりとしぼられたらしく、生徒指導室から帰ってきてからずっと隅っこで泣いている。
先ほどまでの天真爛漫でうるさいほどだった水月が小学生の子供のように泣いている姿を見ると、一体どれほどまでにしぼられたのか逆に気になってしまう。
「まっ。自業自得だな」
だが、和斗はまったく気にした様子もなく手に持っている缶コーヒーを飲む。
「もう、和斗!水月に謝りなさいよ!」
さすがに見かねたのか今まで不干渉を貫いていた夏樹が和斗に話しかけてくる。
「水月は自業自得だろ?夏樹だってそう思うだろ?」
「う・・まぁ・・・それは・・・」
夏樹は言いずらそうにしながらちらりと隅っこで泣いている水月に方へ視線を移す。そこには目をうるうるとさせて懇願するように見つめる水月。
昔にやっていたCMのチワワのようだ。
「・・・こほん。まぁ・・・自業自得だね」
「ガーーーン!」
夏樹の言葉に完全に止めをさされた形となった水月は放心状態で動きが完全に止まってしまった。
「水月は放っておいて、実際のところ、賭けの内容はどうなったんだ?」
和斗は自分の席の前に座っている潤に話しかける。潤は明らかに女の子が作ったと思われるようなバスケットに入った本格的なサンドイッチを片手に和斗へ振り向く。
「君のおかげでめでたく無効だ。まったく・・・」
怒っているのか怒っていないのか分からない微妙な表情で潤は手に持っていたサンドイッチを口に放り込む。
「・・・お前、それ普通に食ってるけど、女の子から貰ったんじゃないのか?」
和斗が潤の食べているサンドイッチを見ながら潤に尋ねる。
「ん?あぁ、僕は遠慮しておくと言ったんだけど、彼女たちがどうしてもと言ってね」
「その女の子たちはお前と一緒に食べたかったんじゃないのか?明らかに一人分の量じゃないぞ、それ」
潤の机の上に載っているバスケットの中身は確かに一人分の量とは思えない量のサンドイッチがぎっしりと詰まっている。
「ん?やはりそうか。一人では多すぎると思っていたんだ。和斗も食べるか?」
そうやって潤は女の子が作ってきたサンドイッチを和斗に差し出してくる。
「お前って結構、デリカシーってのが欠けてるよな」
呆れる様な仕草を見せながら結局、潤から手渡されたサンドイッチを貰い受けて何の躊躇もなく受け取り、口に放り込む。
そんな光景を見てか、水月の傍にいた夏樹が口を挟んできた。
「どの口がそんなことを言ってるの、和斗?和斗にもデリカシーっていうものが欠けてるように思うけど?」
「欠けてる?どこが?」
夏樹の皮肉めいた言葉に大真面目に返答してくるあたり、おそらく本当に分かっていないのだろう。夏樹もそれを分かっているのか、何も言わずただ大きなため息を一つついて再び水月の傍へ戻る。
「ちょっ、夏樹!待てって!俺ってデリカシーないのか?」
和斗の言葉に夏樹は何も答えずに水月を元気づけている。
「無視すんなよ―――――」
「はい、みんな、席についてー」
突然、和斗の言葉を遮るように教室へ入ってきたのは利奈だった。利奈が教室に入ってきたことで昼食をとっていたもの、友達と話していたものなどが一斉に自分の席へ戻っていく。
やはり、休み時間中ということもあってか、和斗たちGクラスの生徒全員が揃っているわけではなく、ところどころ空席が目立っている。が、利奈はそれを気にした様子もなく、また待つ様子もなく、先に話し始める。
「はい。それじゃ、明日の説明を軽くしておくね~。しっかりとした説明は後で篠原先生がしてくれるから」
篠原という単語を聞いた瞬間、水月がビクンと反応して怯えている。
(でも、ま・・・どうせ明日になったら元に戻ってるんだろうな・・)
さすがに幼馴染だけあってこういったことに馴れている和斗はおそらく明日にはいつもの水月に戻っているだろうと思った。
利奈は説明しながら紙をみんなに配り始める。和斗も順番に潤から受け取った紙に目を通す。
それは明日の入学式に関することが詳細に書かれていた。
「明日の入学式には、教師である私は学園周辺の警備として参加しますが、学生であるみなさんも警備・警護にあたることになっています」
これはどうやら毎年のことらしく、別段、今に始まったことではないのでそのことについては誰も不平、不満を漏らさない。
「受け持つ場所などは篠原先生が詳しく説明してくださるとは思いますが、くれぐれも勝手な行動はしないように。特に・・・・龍雅君と高橋君、それに天城君!あなたたちは篠原先生と一緒に行動してもらいます」
利奈が三人を指差す。和斗は名指しで要注意人物とされたことと明日、篠原と共に行動することに不満を抱き、孝明は利奈に対して頑なに無実、あるいは清廉潔白であることを証明しようとし、潤は和斗と同じように不満を抱くものの、孝明と利奈のやり取りの成り行きを和斗と共に見守る様相を見せている。
「利奈ちゃん!俺は何もしてないって!ほんと!マジだから!だから篠原との行動だけは勘弁して!」
「ダメです。これはもう決定事項です」
「そこをなんとか!俺はほんとに大丈夫だから!」
「無理です。これは決まったことです」
孝明の挑戦むなしく、勝利を掴むどころか一矢報いることすらできずに自分の席へ戻ってくる。
「・・・お前も無駄なことするなよ、孝明。あぁなった利奈ちゃんは頑固だからな。俺たちが何言っても無駄だ」
すでに和斗と潤は諦めているのか、随分と落ち着いた様子で孝明に話しかける。
諦めている、というよりももしかすれば、これが二人の性分なのかもしれない。
「・・・だったら、俺たちじゃなかったらいいんじゃね?」
ここで孝明がいいことを思いついたと言わんばかりにまぶしい笑顔を和斗に向ける。
「・・・はぁ?」
対して和斗は思わず呆れ声が出てしまった。
「つまり、だ、和斗。篠原を使えばいいんだよ!」
配られた紙の説明を再開している利奈に聞こえないにように小声で和斗に話す。
「使うったって、お前はどうやって篠原を利用する気だ?」
「ふっ、簡単だ。これを使うのさ」
そういって孝明が取り出したのは篠原に没収されたと思っていた賭けの詳細が書かれている紙だった。
「・・・それで、脅す気か?賭けを続行されたくなかったら、俺たちの命令に従えってか?」
「さすが、和斗。その通りだ!」
「・・・馬鹿か」
孝明渾身の作戦を和斗は一蹴する。
「和斗。羨ましがらなくてもいい。ちゃんとお前も篠原と外れる様にしておいてやるから」
孝明はこれ以上ない眩しい笑顔を和斗に見せつけポンと優しく和斗の肩に片手を乗せる。だが、和斗は笑顔を見せることも呆れることもなくゆっくりと残念そうに口を開く。
「・・そりゃ・・・ありがたいが・・後ろ、確認した方がいいぞ」
和斗がめんどくさそうに顎で孝明の後ろを指す。