作品集
昨日までの太陽はすっかり引き籠もり、”今にも泣き出しそう”というありきたりな形容詞で形容できてしまう程のぐずついた空模様だった。
やっぱり美人の言うことは信用ならん、とお気に入りのお天気お姉さんを罵倒し、駅前の喫茶店のテラス席に腰掛け珈琲を嗜む。今日は晴れると言うから、こうやって大々的に撮影セット準備して公園まで出向こうかと思ったのに。やはり前日から遠足気分で準備をすると、かなりの確率で曇天になるというジンクスめいた迷信が、今日の天気のお陰で見事確信に変わった。
ベージュのショルダーバッグから一眼レフを取り出し、白いマグカップに入っている珈琲を撮る。が、光量が足りないのか、あまり美味しそうに見えない。実際は舌を火傷する程の高温だというのに、この写真からは”舌から体の中枢まで凍り付くような珈琲”というレッテルしか貼られない。久方ぶりで、随分腕が落ちたようだ。
あんまり陽射しに気合出されても、只外に出る気が萎えるだけなのに、かといってここまであからさまに曇天だと作品に影響が出る。
珈琲を一気に飲み干し、会計を済ませ、店を出る。仕方ない、人でも撮るか。
と言うことで駅へ向かう。